公私にわたって運にめぐまれて順風満帆の人もいれば、「俺はどうしてツキがないんだろう……」と独り愚痴をこぼしてばかりの人もいる。ビジネスマンなら誰もが思い当たる、確率だけでは説明できない極端な“運の偏り”が存在するのはなぜなのか。「利他行為は運を引き寄せる」という京都大学大学院工学研究科の藤井聡教授による最新研究から、運を呼び込む習慣まで、成功を目指す人なら知っておきたいセオリーを紹介しよう。
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歴史上の人物にも、「利他行為」によって認められ運を呼び込んだ人物は多い。
織田信長の草履持ちだった豊臣秀吉(当時は藤吉郎)は、四六時中信長の動静を注意深く見守りながら、懐で草履を温め、軒下に犬のようにうずくまっていたともいわれる。彼は出世して大坂城を築城する際も、奉行が棟梁らから見積もりを取ろうとしたのに対し、「言い値でやらせてやれ」と指示した。払ったカネはいずれ自分に戻ってくると信じていたのだ。
丁稚から身を起こして松下電器(現パナソニック)の創業者となった松下幸之助は、1929年の世界大恐慌で会社が打撃を被った際、工場の生産能力を半日分、落としたものの、工員を解雇せずに日給の全額を支払った。
「半日の工賃など、長い目で見ればたいしたことはない。それよりも従業員を解雇して会社の信頼にヒビが入るほうが問題だ」と語ったという。また、失敗を犯した部長の自宅に電話を入れ、奥さんに「旦那はしょげて帰ってくるから、夕飯にお銚子の2本や3本をつけてあげるように」と気遣ったと伝えられる。
“小学校卒”から総理大臣にまで昇りつめた田中角栄は、ほとんど面識のない議員が資金繰りに窮して泣きついてきた際も、「困った時はお互い様だ」と彼の借金の額より多い500万円入りの紙袋を渡したという。秘書や守衛、運転手など目下の者に対しても、毎日労いの言葉を忘れなかった。
※週刊ポスト2011年9月2日号