東京大学が来年度から、主に外国人留学生を対象とした「10月入学コース」を教養学部に新設する。東大は日本人学生の入学時期についても、海外留学を促して国際化を加速するため、秋に移行することを検討しているという。この件について、大前研一氏はこう指摘する。
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頭が固い東大がようやく重い腰を上げただけの話であり、単に秋入学に移行しただけではグローバル人材が育つわけがない。重要なのは、学生の「世界で活躍する」というアンビションをどう育てるのか、ということである。
しかし、そこで問題になるのが、東大をはじめとする日本の大学教授に、アンビションを持って世界で活躍できる学生を育成しようという意志と素質、そして能力があるのか、ということだ。
国際的に存在感を増している中国の清華大学、北京大学、上海交通大学といった一流大学の場合、すでに英語による授業を次々と導入しており、英語力が必須になっている。たとえば、EUと中国政府の合弁による上海のCEIBS(China Europe International Business School=中欧国際工商学院)はアジアナンバーワンのMBAスクールともいわれるが、欧米の学者を大勢招聘し、すべての授業を英語で行なっている。キャンパスも上海だけでなく、北京と深セン(センは土ヘンに川)に拡大している。
そういう環境で育った学生たちは強烈な国際感覚を持っており、英語も堪能だ。私は何人ものCEIBSの学生と会話をしたが、みんな海外留学の経験はないのに、ネイティブ並みの英語を駆使していた。
そして、成績上位の学生たちは、いずれアメリカやイギリス、オーストラリアなどの大学院に留学して外資系企業に入社するか起業する、という明確なキャリアパスを想定して猛勉強している。この情況を鑑みても、これから中国の大学が国際的に活躍する人材を輩出するのは間違いないだろう。共産党政権にとっては、むしろ重荷になってくるのではないか、とさえ思えるのである。
実際、すでにIMF(国際通貨基金)では、1人増員された副専務理事に初めて中国人の朱民・元中国人民銀行副総裁が就任した。今後中国は、資金力だけでなく人材面でもアジアではインドと並んで、さらに発言力を強めることになるだろう。
※週刊ポスト2011年9月2日号