国内外で圧力を強めている中国。中でも国内で厳しい弾圧を受けている民族のひとつがチベット族だ。チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世(76歳)は8月5日、インド北西部ヒマチャルプラデシュ州ダラムサラで、単独インタビューに応じた。聞き手は、ジャーナリストの相馬勝氏だ。
* * *
――3月11日、我が国では東日本大震災が発生し、大きな被害が出ました。あなたは4月29日、東京・護国寺で震災の四十九日特別法要を行なった。まず、日本人として感謝したいと思います。なぜ訪日して法要を行なおうと思ったのですか。
ダライ・ラマ:第一に、日本は仏教国です。第二に、日本には多くの友人がいます。大地震、津波、さらに原発が破壊されて放射能漏れが起こるなど深刻な事態が長期化しそうだと聞いた時、私は何とか日本に行き、友人や被災者らと会って、苦しみを分かち合いたいと切望した。
(米国訪問の途中、トランジットで)東京を訪問する機会があり法要を執り行なう機会を持つことができ、被災した友人にも会いました。
その時、私は友人に「もう災害は起こってしまったのだから、あまり悩んだり、悲しんだりしないで、今は被災した経験を生かしてもらいたい。新たな希望を持って、家を建て直し、新たなコミュニティを建設できるよう頑張ってもらいたい」と激励した。これは当時の私の率直な気持ちでした。
――日本人に対してのアドバイスはありますか。また、日本は大震災の復興の過程で、国際的にどのような役割を果たすべきでしょうか?
ダライ・ラマ:私は日本人を全面的に信頼しています。日本人は勤勉で、協調性が豊かで、能力もある。日本はアジアの中で最も発達した科学技術を持ち、しかも発展した民主主義国家ですから、日本が国際的に果たすべき役割は非常に大きい。
さらに、日本には数千年にわたる膨大な文化的な遺産もある。だから必ず復興を成功させてほしい。これは日本自身のためでもあるが、アジアのためにも必要なのです。
日本では、選挙の結果などで首相がころころ代わって非常に不安定に見えます(笑)。でも、それが民主主義システムなのです。中国は日本を真似て、科学技術を発展させて産業革命を進めているが、将来は、日本の民主主義も真似てもらいたい。そのためにも、日本の復興を期待しています。
※SAPIO 2011年9月14日号