千葉県柏市で発覚した、2才10か月男児の虐待餓死事件。被害者となった小坂蒼志ちゃんの死亡から2か月半たった8月9日、父親の小坂雄造容疑者(39)と母親の里美容疑者(27)が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。
蒼志ちゃんは5月26日午前、里美容疑者の「子供が呼吸をしていない」という119番通報で救急車で病院に搬送されたが、午後5時に死亡が確認された。死因は栄養失調による餓死。このとき身長は約74㎝、体重は5.8kg。2才10か月の男児の平均体重である13kgの半分以下しかなかった。
夫婦は数百万円の借金を抱え、里美容疑者は生活が苦しかったことがネグレクトの原因だと供述している。
里美容疑者は、長女はきちんと妊婦検診を受けて出産したが、次女は、通常は妊娠期間中に14回受ける検診を1回も受診せずに出産している。妊婦検診を受けずに出産した場合、死産率は2倍、体重2500g未満の低体重児が生まれる割合は3倍以上になるといわれている。
同じように飛び込み出産で2007年に産んだ三女は、生後わずか3か月で病死。餓死した蒼志ちゃんについても、臨月にはいって2回受診しただけで、飛び込み出産に近い状態だった。
地元・柏市の自治体関係者は、里美容疑者の子育てに早くから不安を抱いていた。
「(蒼志ちゃんが)約2100gと小さく生まれたことと、これまで“飛び込み出産”を繰り返していたという経緯から、生まれた翌日に、市の児童育成課と保健所の職員が病院でご家族にお会いしています」(柏市役所こども部)
しかし、市の職員が蒼志ちゃんの1才半検診を受診させるために自宅を訪問したときには、雄造容疑者に強く面会を拒否され、最後となる4回目の自宅訪問を行ったのは、昨年9月のことだった。
「お父さんが出てきて、“自分たちはきちんと子育てをやっている”と一方的に話をされました。再三面会をお願いすると、“来年の6月なら花粉症がおさまるから、妻子に会わせる”と約束してもらいました」(同)
しかしドアの向こうでは、決して他人には見せられないネグレクトが行われていた。逮捕後、里美容疑者は、取り調べのなかでこう述べている。
「やせ細っている姿を見られて、何かいわれるのが嫌だった」その一方で、ごく普通に成長していた長女だけを偏愛し、連れ歩いていたという里美容疑者。
東海学院大学人間関係学部心理学科教授の長谷川一博さんはこう説明する。
「この事件の場合、母親は自分が幼いころに3人きょうだいの長女として苦労した経験から、同じ境遇の長女に自身を投影したのではないでしょうか。心に余裕がないなかで、過剰に長女の面倒を見ようとするあまり、次女や長男には愛情が向かなかったのだと推察されます」
幼少期からの心の軋みが、非業の結末につながってしまったのか?あまりにも悲惨な事件を引き起こした負の連鎖。残された子供たちに続かないことを祈ってやまない。
※女性セブン2011年9月8日号