党代表の役割が「マニフェストの見直し」とは、世界中どこの政治学者に聞かせても腰を抜かすに違いない。――これが民主党の実態だが、その象徴が「子ども手当」である。民主党政権誕生の原動力となった政策は、野党やメディアからの激しい批判に恐れおののいた与党のせいで葬られようとしている。だが、「子ども手当」は、本当に無くしてもいいものなのか。
朝日新聞は8月に実施した世論調査で「子ども手当をやめて児童手当に戻すことに賛成ですか」という質問に、賛成が63%に達したと報じた。
しかし、子ども手当の受給世帯は全体の2割に過ぎない。このネガティブキャンペーンのなかにあっては、この調査結果は当然である。
実際には、国民の間にも民主党支持者にも、子ども手当存続を望む声は多い。
民主党の渡辺義彦・衆議院議員(比例・近畿ブロック)がいう。
「子ども手当には特に女性からの支持が大きかった分、見直しに批判が大きいですね。家計に直接響きますから。子育て世帯の女性からは、『何で2万6000円が1万5000円ちゅう話になるんよ。家計にもろに響くわ。子ども手当を踏まえて生活設計しようとしていたのに、話が違うやん!』なんて、よくいわれます」
民主党は2009年総選挙のマニフェストで、「中学生までの子供全員に月2万6000円を一律支給する」としていたが、政権発足後、1年目は半額の1万3000円とされた。2年目からは満額支給するという約束だったが、実際にはこの10月からの支給額は、3歳未満が1万5000円、3歳から中学生までが1万円(第2子までの場合)に減額されてしまった。母親たちから落胆の声があがるのも無理はない。
※週刊ポスト2011年9月9日号