国際情報

英語下手妻 米滞在4年間を「困ったら抱き付く」で乗り切る

 おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれ。元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、2007年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に在住。著者に『ベイビーパッカーでいこう!』や週刊ポスト連載をまとめた『アメリカなう。』などがある。4年間のアメリカ暮らしを終え、帰国したおぐにさんだが、アメリカ暮らしの癖は簡単に抜けないようだ。

 * * *
 4年間のアメリカ暮らしを終え、とうとう帰国した。ああ、ニッポンってすごい。ワシントンDCではまず食べられない極上の寿司ネタが、近所のスーパーマーケットにフツーに並んでるなんて! おまけにこの蒸し暑さ。生ビールが止まんない~。

 帰国にあたって、一番心配だったのは中学生の息子のことだった。「帰国子女ってイジメられるんだって」「オトナよりずっと、日本への再適応が大変らしいぞ」。夫婦して、どれだけ案じたことか。

 ところが成田空港到着から数分後、息子は小声で耳打ちしてきた。「母ちゃん、もっとフツーにしないと日本で浮いてるよ。みなに嫌われるよ!」。久しぶりの帰郷と、日本語が通じる快適さに舞い上がり、見知らぬ人にもハイテンションで話しかけまくってた私と違い、息子は「どうすれば日本に溶け込めるか」を冷静に観察してたらしい。

 この前も、「きゃあ~、久しぶり!」と旧友と再会し、うれしくてつい相手を抱き締めたら、息子に厳重注意されちゃった。「さっきの人、身体が逃げてたよ。日本じゃ、抱き付いちゃダメ。『ハグ(抱き合うこと)子さん』とか『抱き付き魔』とか、陰口叩かれるよ」。ああ、逆に息子に心配されるなんて、親として情けない……。

 でも、相手に抱き付く癖ってのが、なかなか抜けない。そもそも、私の「抱き付き癖」は下手な英語が原因だ。相手に感謝や感激を伝えようとしても、言葉(英語)じゃすぐにつっかえる。だから「何も言わず、とりあえず抱き付く」ことで、この4年間、人間関係を乗り切ってきた。私にとってハグは、下手な英語をごまかす格好の武器というか、究極のサバイバル法だったのよね。

※週刊ポスト2011年9月9日号
(「ニッポン あ・ちゃ・ちゃ」最終回より抜粋)

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン