国内

今角栄が生きていたら「東北に第2の首都を」と呼びかけたか

 東日本大震災からすでに半年近くが経過したにもかかわらず、被災地では一向に復興が進んでいない。かつて新潟を襲った災害「羽越豪雨」において田中角栄の復興に向けた数々の見事なまでの対応を目の当たりにした毎日新聞社専門編集委員で、元サンデー毎日編集長の牧太郎氏が、角栄ならばこの災害にどう臨んだかを論じる。

 * * *
「羽越豪雨」から44年後の今年、未曾有の大災害、東日本大震災が起こった。神が人間の英知を試している、と私は感じている。「羽越豪雨」とは桁違いの大災害であるが、復旧、復興に知恵と行動力が求められるのは同じである。もしも今、田中角栄が生きていて、総理大臣だったら、どうするだろうか。かつて角栄の知恵と行動力を目の当たりにした私は、角栄ならば……と夢想する誘惑に駆られる。

 菅内閣は大震災発生後、東日本大震災復興構想会議を始め、緊急災害対策本部、原子力災害対策本部など、いくつもの会議、本部を矢継ぎ早に立ち上げたが、数が多すぎて連携不足だ。中心に位置する復興構想会議にしても委員の数が多すぎて、逆に十分な議論ができていない。これでは何事も決定が遅れるのは当然である。

 角栄ならこんな無駄な会議や本部は作らず、もっとシンプルな形にして、素早く物事を決定していくだろう。意思決定のスピードは菅直人とは段違いに速い。

 そして、まずは自らのリーダーシップで、国民をひとつにまとめ、被災地と被災者に希望を与えるスケールの大きなスローガンをぶち上げるはずだ。例えば「東北に第2の首都を」といったスローガンが考えられる。

 これは、首都機能の一部移転といった小規模なものではなく、「第2の首都」と言えるほどの都市を仙台など東北の中心地に作ろう、というものだ。角栄はかつて日本列島改造論で国土の均衡ある発展を訴えたが、大震災からの復興に際し、それに匹敵する国土の改造を行なおうとするのではないだろうか。

 それを実現するため、大規模な予算も組む。今回、政府は大震災からの復興予算を10年間で約23兆円と決めたが、それでは規模が小さすぎる。角栄ならば100兆円規模の予算を組むだろう。やるときは一気に、というのが角栄流であり、その方が経済波及効果ははるかに大きい。

 財源は巨額の復興債を発行して賄う。その償還財源を確保するために安易に増税を行なうことはしない。逆に財務省に対して「日本経済が回復するまで5年間程度、増税はするな」と命ずるだろう。

 被災地の復旧、復興に際しては、かつての「羽越豪雨」のときと同様、被災地の企業に事業を受注させ、被災者を雇用させるだろう。また、今の地震保険の制度では、1回の地震で政府や保険会社が支払う保険金の総額に上限が設けられているが、角栄ならばその上限いっぱいの保険金が支払われるようにするだろう。

 あるいは、特例法案で上限を引き上げるかもしれない。そのようにしてより多くの保険金が被災者に支払われれば、その分、被災地でお金が回り、経済も成長する。そして自然増収を期待する。

※SAPIO2011年9月14日号

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン