兄・長門裕之(享年77)と弟・津川雅彦(71)は、不思議な兄弟仲を見せ続けた。長門さんが亡くなって3か月、めったにインタビューを受けないことで知られる津川氏が、長門さんのラストインタビューを行なった吉田豪氏を聞き手に、兄弟の秘話を語った。ここでは長門と妻・朝丘雪路、そして長門の妻・南田洋子に関する仰天エピソードを紹介しよう。
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――長門さんが暴露本(『洋子へ』)を出したときはどう思ったんですか?
津川:あの頃『すばらしき仲間』って番組があって、僕と雪江(朝丘雪路)と南田洋子と兄貴と4人が出てね、当時は『スチュワーデス物語』って番組が視聴率取ってて、「作り方がひどい。人気になってるからって、ああいうチャッチいドラマを作ってはいけない。心ある役者は出演を断わるべきだ。無料のテレビにかじりつく茶の間の文化度は最低になった。一億総白痴化は進んでると認識すべし」とね。
――わざわざテレビで!
津川:テレビだからこそ言いたかった。そしたら、南田洋子が「雅彦さん、役者にとって沢山の人が観てるのは、素敵なことなのよ」「いやいや、中味が大事だよ……」「私! ちょっと出たのよ!! あれに」「えっ? 洋子さんも?」「俺も出た」「えっ! 兄貴も?」。とどめは「私も出てます」と雪江。
「僕は間違ってました。実は、素晴らしい番組かもしれない」(笑)。これがカットされずにオンエアされちゃった。「面白かったです!」って誰もが褒めるほど評判良かった。兄貴にしたら「雅彦は毒を撒いて、アテンションしやがった」。毒は効果なんだと学習したんだね。それまで兄貴は自分の才覚で、「テレビの時代は夫婦仲よくが人気になる」的に先を読んで成功してた。頭が良いから正攻法を好んだわけ。だから毒を撒く度胸が育たなかったし、ケツまくるバカな手も使わなかった。
――おしどり夫婦を意識的に演じたりしてきた、そんな長門さんが初めて毒を使ったのが、あの暴露本だったってことですか?
津川:甘みを出すために西瓜に塩をかけるでしょう、多けりゃもっと甘みが出るってもんじゃない。本来塩は毒。大量に塩喰ったら死んじゃうのがわかってなかった(笑)。
※週刊ポスト2011年9月9日号