夏の甲子園に次いで、高校球児たちが活躍した、各国選抜メンバーによる「アジアAAA野球選手権大会」。日本チームは見事優勝したが、ノンフィクション・ライターの神田憲行氏は、試合を観戦しながら考え込んでしまったという。
* * *
アジアの選抜された高校生たちの野球大会「アジアAAA野球選手権大会」(8月28日~9月1日、神奈川)は日本の全勝優勝で終わりました。松坂大輔投手らを擁した1998年第三回大会以来の日本開催、ライバルの台湾、韓国を下しての優勝は日本野球の存在感を改めてアジアに印象づけたことでしょう。
一方で考えさせられたこともありました。
AAA選手権は世界大会なので、各試合ごとに対戦国の国旗が掲揚されて国歌が流されます。そのときに観客で起立脱帽する人がほとんどいない。
いや実を言うと、私も最初は立つことをためらいました。周りが起立していないのに自分だけとか、恥ずかしくて……。そのときたまたま近くで一緒に観戦していたメジャーの国際スカウト(日本人)の方が小声で「一緒に立ちませんか」と誘ってくれて、立つことが出来ました。
甲子園の開会式のように球場全員が起立するときは「みんながしているから」という理由が自分の中に生まれ、自然に立つことが出来ます。でもほとんど立つ人がいない中で、「君が代」で立つことは、別のニュアンスを周りの人に持たれてしまうのではないか……そんな気持ちがありました。
しかしこれはスポーツの国際大会です。日本はホスト国です。
君が代はもちろん、対戦国の国家に対しても脱帽して起立するのが、ホスト国の観客として当然のマナーでした。メジャーのスカウトはさすが国際的な仕事をしているだけあって、そのあたりの「世界的な感覚」を身につけられていた。
グラウンドでは、試合開始前にホーム両側に選手が並んでお辞儀をする「日本式」が採用され、死球を当てた選手に投手と一塁手が帽子を取って詫びをする日本選手の姿がありました。
また本塁打を放ってダイヤモンドを一周している日本選手を、パキスタンの遊撃手がハイタッチするという、微笑ましいシーンもありました。野球をテーマに、各国の高校生たちの文化交流が行われていました。
ただ、私を含めた観客は国際レベルに達していたのか。いささか反省させられました。