大阪の夜の街をパトロールして少女たちに声をかけて回る「ナニワのオバちゃん夜回り隊」。ボケとツッコミを織り交ぜて多感な年頃の少女たちの心を開いていく話術はまさに“職人技”だ。
ミナミのシンボル、戎橋付近をパトロールしていた有松孝子さん(61)と大平康代さん(62)が歩道横の花壇に腰掛けていた2人組に近寄っていく。
有松:「こんばんは」
少女A:「誰? オバちゃん」
有松:「オバちゃんらは、ボランティアなんよ」
少女B:「放っといてや」
大平:「(間髪入れずに)それが放っとかれへんのやわ。オバちゃんらにとっては大事な子供たちやからな」
少女A:「何それ。私らは関係あれへんやん」
有松:「何いうてんねん。あんたらのような子供たちこそが日本の宝なんや」
キョトンとして顔を見合わせる2人。間髪入れずに大平さんが畳みかける。
大平:「2人はいくつ?」
少女B:「20歳」
有松:「ってコトは、昭和何年生まれ?」
少女A、B:「昭和!? アハハハ、オバちゃんたちダッサいなァ。平成に決まっとるやろ」
大平:「平成かいな。でも、昭和をバカにしたらアカン。オバちゃんたちはな、戦争中に竹槍でB29を突いてたんやで。すごいやろ」
有松:「いやいや、防空壕に逃げてただけやがな……って誰がやねん、ええ加減にしいや」
しばしの沈黙が流れた後、
少女A:「ボークーゴーって何?」
大平:「(大げさに頭を抱えて)……帰ってお母ちゃんに聞いたらええわ」
若干(?)のジェネレーションギャップをものともせず、オバちゃんと少女たちはそのまま話し込む。やがて警戒を解いた少女たちは、本当は17歳であることを告白、オバちゃんの「終電までに帰りや」という言葉を素直に受け入れていた。
オバちゃんたちが声をかける際に気をつけているのは、「絶対に説教にならないように」ということだ。
「笑顔で柔らかいムードで話す。でも、ダメなことにはきちんとダメという。そういう意味では、大阪のオバちゃんというキャラは最高ですね」(有松さん)
「オバちゃんになると、どうも人の世話を焼きたくなるんですわ(笑い)。変な正義感が出るんかな」(野澤さん)
※週刊ポスト2011年9月9日号