「歴代最悪の首相」と評価される菅直人氏は、人気取りの国内政治に忙しく、外交に見向きもしなかった。まさに日本外交は放置されていた。鳩山由紀夫首相時代も含めて、日米同盟を毀損し、日本の地位を貶めた民主党政権の罪は重い。野田佳彦新首相の下、巨大化する中国に毅然と対峙し、米国やASEAN諸国からの信頼を取り戻すために、日本は何をするべきなのか。ジャーナリスト・櫻井よしこ氏が指摘する。
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この2年間の民主党政権下で、日本外交はあまりにも大きなものを失ってきました。国の指導者の役割の中で最重要のものが安全保障と外交です。国際社会との関係で方向性や課題の処理を間違えると、即、国益が損なわれるのは、民主党政権下の日本の実態を見れば明らかです。それだけに野田佳彦新政権には、早急な外交の立て直しが求められます。
野田氏はお父さんが自衛官で、安全保障の重要性はよく認識していると思われます。また、いわゆるA級戦犯についても、すでに法律的に全員がもはや戦犯ではないと語っています。その考え方は正しいのです。
そこで課題は、野田氏がその考え方を保てるかどうかです。日本国民の視点から見て正しい立ち位置を守り続けることができれば、それが外交・安保政策を支える強い力となるはずです。そこから初めて日本外交の立て直しが可能になります。
これまでの民主党外交のどこが決定的に間違っていたのかを見てみましょう。まず、最大の罪は、日米関係を大きく損なったことです。
2009年9月に首相に就任した鳩山由紀夫氏は、普天間飛行場移設問題で、日米合意を覆して「最低でも県外」と主張しました。しかし彼には何の「腹案」もなく、日米関係を決定的に壊しただけで首相の座を降りました。この間、日米関係は、正式な形での日米首脳会談が一度も行なわれないという非常事態に陥りました。
後を継いだ菅直人首相は、「日米関係の重要性」を言葉ではいいましたが、実際には何もしませんでした。普天間問題は1ミリも動かず、米国が日本の参加を強く求めているTPPも、口では「やる」といいながら放置しました。菅氏の頭には、そもそも「外交」の文字は存在していなかったのでしょう。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号