野田佳彦新総理が誕生し、ネット上では「ダチョウ倶楽部の上島竜兵に似ている!」などと評判だが、民主党内では別の評価をされているようだ。173センチ、79キロという体型でタレント・高木ブーに似ていることから、党内での渾名は「野田ブー」。
昨年6月に財務相に就任してからは、「地元での日課の辻立ちをしなくなったためかさらに肥えてきた」(同僚議員)という。巨漢の歴代首相といえば100キロ超あった森喜朗氏が思い浮かぶが、いまやそれと遜色ない「重量級宰相」にならんとしているのは間違いない。
だが、「重量級」なのは体重だけだ。野田氏の政治的言動を紐解くと、むしろ“軽さ”ばかりが目立つ。野田氏は当選以来、「庶民派」を売りにしてきた。財務相になるまでの25年間、毎日、駅前演説を続けたのがセールスポイントだ。
しかし、政治家の実績は弁舌ではない。政治評論家の浅川博忠氏はこう断じる。
「政治家はどんな政策を打ち出し、国会運営など政策を通すのにどんな功績があったかの2つの面から判断される。野田氏から連想するのは国対委員長時代に偽メール事件(※)で党にダメージを与えたことくらい。政策面での実績はほとんどない」
ところが財務相になるや、いつの間にか「財政通」「政策通」と呼ばれるようになった。経済評論家の山崎元氏が語る。
「自分の政策があるわけではないから、官僚の意見通りに動く。官僚はそういう意のままになる政治家を『政策通』と宣伝して評価を高めてやるわけです」
菅直人・前首相が財務相だった頃に「空きカン」と命名した財務官僚が、野田氏をこう呼んでいるのをご存じだろうか。
「使い勝手よし彦くん」――。
野田氏は財務相就任前に、「天下りや無駄遣いのカラクリを残したまま消費税を上げても、砂漠に砂をまくのと同じ」と語っていた。それが急に増税派に転向したのも財務官僚の振り付けというわけだ。
ただ、本人は財政通と呼ばれるのが重荷だったのかもしれない。今年7月、党内の反対を押し切り消費税値上げ方針を決めた後の講演での一言が、それを物語る。
「たまたま財務相になったが、ホントは文科相になりたかったんです」
こんな人物が総理の椅子に座ってしまったのは「喜劇」というほかない。
※「偽メール事件」/2006年2月、民主党の永田寿康議員(当時)が国会でライブドア元社長・堀江貴文氏と武部勤・自民党幹事長の親族間でのスキャンダルを追及。代表だった前原誠司氏、国対委員長で永田氏と親しかった野田氏らが追及に前のめりになったが、根拠としたメールが偽物だったことが判明。全面謝罪に追い込まれ、永田氏は議員辞職、前原氏は代表を辞任、野田氏も国対委員長を辞任した。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号