世界保健機関やユニセフの報告では、2008年の妊産婦死亡率は推定で、10万人あたり約260人で年間約35万8000人が妊娠や出産に絡み死亡したと発表されている。お産に「自然」はあるのか? 産科医・性科学者の宋美玄さんと医療ジャーナリストの熊田梨恵さんが語った。
宋:いや~、しょっぱなから遅刻でほんますみません。クリニックの出がけに状態のよくない妊婦さんが来られて、ちょっといろいろトラブってしまいまして。
熊田:やっぱり、妊娠・出産はトラブルがつきものですか?
宋:うーん、それが“よめない”んですよねえ。例えば聞いた話ですが、妊娠27週でまったく順調やった妊婦さんが、自宅で急に破水されたんでタクシーで来はったそうです。早産になると思ったので規模の大きい病院を探して、救急車で搬送してもらえました。最近は受け入れ先が見つからないことが多いんでラッキーでしたけど、彼女が病院を嫌がってなかなか行きたがらなかったそうです。
熊田:そんな大変な状態なら、「一刻も早く運んで」といいそうなのに。
宋:そのかたが水中出産を希望してはったそうで。「お産は自然なことだから病院はイヤ。余計な医療をされる」と長時間いわれて、めっちゃ困ったみたいですね。状況を説明して、最終的には納得されて運ばれたみたいですけど。
熊田:世界でいちばん稼いでいるといわれるモデルのジゼルも一昨年、水中出産をして話題になりましたね。セレブイメージで人気も高まってるとか…。
宋:でもね、水中出産は「自然」じゃないんです。もともと人間は陸生動物だから、昔から陸上で出産していました。破水してしまえば、産道から水がはいって子宮内で感染症を起こす危険があります。出血量がわかりにくいという難点もあります。敗血症という全身にばい菌が回った状態で搬送された赤ちゃんもいたらしいです。27週で破水してしまえば、水中出産は赤ちゃんにとって危険すぎます。先ほどの患者さんは、母子ともに無事やったそうでよかったですけど。
熊田:水中出産では危なかったかもしれないわけですね…。
※女性セブン2011年9月15日号