自身をドジョウにたとえた野田佳彦新首相。はたして新政権の誕生は、低迷続く日本株にどう影響するのか。今後の日経平均株価の予測推移とともに、カブ知恵代表の藤井英敏氏が解説する。
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野田新首相は菅政権の財務相だったことから、経済政策が大きく変わるわけではないだろう。なおかつ効果のほどはさておき、8月初めに為替介入に踏み切ったことからも、前首相のように「言いっ放し」ではなさそうなイメージもあり、野党からの信頼も得られやすい。加えて、前原政調会長と同じく米国寄りで、米国からの信頼も得られやすい点は株式市場にとってプラスに働く。財政規律が守られる点でもポジティブといえる。
何しろ日本の株式市場は、震災後の株価暴落で個人投資家がさんざんな目に遭って退場を余儀なくされ、証券会社の自己売買部門も次々と消えるなか、日本人はほとんど売り買いをしていないのが実態だ。外国人投資家が完全に主導権を握るなかでは、いかに米国と仲良くするかにかかっており、そういう意味では、対米追随型の野田氏が首相になったことは、市場では歓迎されている。
おそらく9月にはオバマ政権が雇用対策を打ち出し、FOMC(米連邦公開市場委員会)でも何らかの追加緩和策が出され、米国景気好転への期待が高まるはずだ。
そう考えていくと、日経平均株価も8月の8600円台を底値に短期的には9600~9700円を目指していく展開が予想される。ただ、外国人投資家がメインプレイヤーである以上、米国株との連動は避けられず、上値は重い。ましてや10月というのは毎年米国株が暴落する季節性もあり、再び9000円割れも考えられる。このままいけば、年内は8600~9600円というボックス圏で推移する可能性が高いと見ている。
ただ、ネックは野田氏が「増税派」であるということ。どれだけの規模でどのタイミングで増税に踏み切るかによって、マーケットに与えるインパクトは大きく変わってくる。
米国の景気回復への期待感が高まり、欧州の債務問題がこれ以上深刻化しないというタイミングを踏まえ、3次補正予算がすんなり通って、日米欧それぞれの緊張状態が緩和したところで増税に踏み切るようであれば、1万円の大台を回復するシナリオも想定できる。
「最悪シナリオ」は、功を焦り、3次補正予算というアクセルと踏むとほぼ同時に、所得税や法人税を増税するようなブレーキを踏んだ場合だ。そうなれば日経平均の暴落は避けられないだろう。
いずれにしろ、「ドジョウ」が日本経済の「土壌」が固まらないうちに増税に踏み切れば、まさに日本経済は大きく揺らいでしまう。自らそう称するように、泥臭い経済運営を望みたい。