ご高齢にもかかわらず被災者を励まして続けている天皇陛下。そのご健康はどのように維持されているのか。陛下の食生活の基本のひとつに「身土不二(しんどふじ)」がある。現在のスローフードや地産地消に引き継がれた考え方で、生活しているその土地にできるものを、その季節に食べることが心身の健康によいという考え方である。
天皇陛下の召し上がる食材は、栃木県高根沢町にある「御料牧場」で生産されたものと、築地から届けられる魚。すべて国産100%であり、まさに「身土不二」にかなっている。
例えば昭和天皇のある1日の食事のメニューは、次のようなものだった。
●朝食 オートミール、トースト、小蕪クリーム煮、サラド(サラダ)、果物、煮冷水(湯ざまし)、お茶、牛乳
●昼食 お汁、麦ご飯、矢柄魚、味噌八つ頭、バター 煎めさやえんどう、お漬物、果物、お茶、牛乳
●夕食 スープ、仔牛肉潰包焼、玉葱バター炒め、パン、果物、カルグルト(御料牧場で作られる乳酸飲料)、お茶、牛乳
宮内庁大膳課に務めた経験を持ち、現在は東京・江古田で『ビストロ サンジャック』を開いている工藤極氏はこう語る。
「聖上(おかみ ※大膳課職員の天皇陛下の呼び方)はいつも腹八分目で終えられ、おかわりは一度もされませんでした。食後のお菓子以外は間食もされず、アルコールもお飲みになりませんでした」
侍医から「1日1800カロリーまで」という指示があり、市販の化学調味料は使わず、塩分も1日10グラム以内だったという。そうした食養学の考え方は、平成の今も脈々と引き継がれ、麦ご飯や、カルグルトも天皇家の食卓に並んでいる――。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号