白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によると、人を笑わせる能力のある人がモテるのは、ある種のホルモンの作用かもしれないという。以下、白澤氏による解説だ。
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今年、芸能生活50周年を迎えたザ・ドリフターズの加藤茶さん(68)が、元モデルの、23歳の女性と再婚して話題を呼んだ。人を笑わせる能力のある人がモテるのは、ある種のホルモンの作用かもしれない。
東京大学の東原和成教授らは、マウスのオスの涙から、性フェロモンとして働くタンパク質「ESP1」を発見した。メスがこのタンパク質を吸い込むと鼻の奥の感覚器に作用し、メスの脳の視床下部が活性化する。するとメスは交尾を受け入れる気分になる。ESP1に反応したメスの、交尾に向かう行為は約5倍にも増えた。実際、ESP1を涙に多く含むオスほど、頻繁に交尾ができることが分かった。
残念ながら、ヒトにはESP1のようなタンパク質は見つかっていないが、女性の視床下部をいかに活性化させるかということに、「モテ男」になるヒントが隠されているようだ。 視床下部は自律神経、ホルモン系、情動、性行動などの本能行動を制御し、「エストロゲンを、いつどれだけ卵巣に分泌させるか」の指示も出す。
エストロゲンは、「美人ホルモン」とも呼ばれ、女性らしい体つきや、若々しい美肌をつくりだす女性ホルモン。視床下部は更に初潮や閉経など女性の生涯における生殖時期を刻む時計のような役割も果たしている。
視床下部が活性化すると、女性は喜怒哀楽も表情も豊かになり、エストロゲン効果で肌がつやめき、性欲も高まる。女性として「うるおって」くる。 笑いは視床下部を活性化し、「脳内麻薬」であるβ-エンドルフィンの分泌も誘導する。β-エンドルフィンは、ランナーズハイなど、人が脳で快楽を感じた時に分泌される脳内ホルモンで、性的快楽でも脳内分泌が誘導される。
つまりお笑い芸人は、「女性からいつでも笑いをとれる」という最強のモテ兵器を持っているわけだ。身のまわりの、不思議にモテる男と、なぜかモテない男を見比べてみてほしい。「笑わせ力」が要因かもしれない。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号