民主党政権が誕生して以降、鳩山由紀夫氏や菅直人氏は、人気取りの国内政治に忙しく、まさに日本外交は放置された状態だった。野田佳彦新首相の下で、巨大化する中国に毅然と対峙できるのか? これまでの民主党政権の外交について、ジャーナリスト・櫻井よしこ氏が論評する。
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民主党政権になって以来、中国は尖閣諸島の領有権もより声高に主張し、行動に示すようになりました。8月24日に日本の領海を侵犯した中国の漁業監視船は、「釣魚島は中国固有の領土」という電光掲示板を掲げて航行しました。
私が会う中国の要人たちも、最近は尖閣諸島が中国の領土であるというはるか昔からの歴史をとうとうと述べるようになりました。昨年9月の中国漁船事件以来、中国側は理論武装に力を入れているのです。
日本も国際法にかなった形で主張を繰り返さなければなりません。ところが民主党政権は昨年9月の尖閣沖中国漁船衝突事件では「即時に釈放しなければさらなる行動をとる」という温家宝首相の恫喝で腰砕けになり、船長を釈放。今回の領海侵犯に対しても「遺憾」というのみです。
それどころか、9月1日から中国旅行者に対するビザを大幅に緩和しました。従来の発給要件の「一定の職業上の地位及び経済力を有する者」から「職業上の地位」を除き、滞在期間を15日から30日に延長しました。
中国には日本をまともな国家として扱う気はもともとなく、日本の頭を押さえつけて自分たちのために利用することを考えています。江沢民氏が主席のとき、在外の大使全員を集めて「(日本に対しては)歴史問題を終始強調し、永遠に話していかなくてはならない」と演説していたことが、『江沢民文選』で明らかになっていますが、歴史カードをつきつけて日本人を道徳的に劣位に立たせ、中国の主張を押しつけるのが、いまも変わらぬ中国の基本的な戦略です。
その中国に対し、自ら膝を折り、中国の意に沿うように動いてきたのが民主党政権です。野田氏はこの悪しき外交を繰り返してはならないでしょう。
※週刊ポスト2011年9月16・23日号