“連続テレビ小説の原点”ともいえる、昭和を生きる女性の一代記『おひさま』(NHK)。偉業を成し遂げるわけでもない、輝かしいゴールが待っているわけでもない、が、その地に根を張り、“普通の”人生を歩むヒロイン・陽子の物語が、現代の女性たちを魅了している。
4月4日の初回視聴率は、18.4%。最近では視聴率20%を超えることもあって、ドラマ部門のトップを走っている。
『おひさま』の主人公・陽子は、病気の母との最期のときを過ごすために、家族で東京から安曇野へ移り住み、少女時代を過ごす。世の中が戦争へと向かうなか、女学校へ。昭和16年に国民学校の教師になるが、松本市の老舗そば店に嫁ぎ、結婚の翌日、夫は出征。
そして終戦。夫は無事復員し、子供にも恵まれる。いくつかの試練を乗り越えながら、陽子は家族や友人、周囲の人たちとともにたくましく、爽やかに生き抜いていく。
ヒロインとしては“普通”すぎるほど普通な人生。しかし、その生活の一場面一場面に視聴者は引き込まれていく。番組を担当しているNHKの小松昌代チーフ・プロデューサーがいう。
「何か偉業を成し遂げたような有名な女性だとか、明確なゴールがある人生ではなくて、その地に居続ける普通の女性の強さを描きたかったんです。自分が何かをするのではなく、いろいろなことを受け止めながら生きていくような」
庶民文化研究家の町田忍さんも、『おひさま』に惹かれているひとりだ。
「話すスピードがゆっくりして聞きやすい。いまは言葉が非常に乱れているし、早口でドタバタ。とくに女性の言葉が男性以上に悪くなっているように感じます」
番組の制作側は、そのような女性の品格を意識していたのだろうか。
「全編を通して品格というか、品のあるものにしたいという意識は当初から持っていました。現代のドラマではテンポを出すために、どうしても相手の会話を食っていく(会話をかぶせる)ことが多いのですが、このドラマでは、相手が話しているのを、相手の顔を見ながらきちんと聞く。そして相手の言葉を受けて、自分が話す。この会話の基本をしっかりやろうと最初から決めていました」(小松さん)
※女性セブン2011年9月22日号