小宮山洋子厚生労働相が就任早々「たばこ1箱700円」と増税路線をブチ上げたが、この発言は、愛煙家ばかりか、たばこ税を所管する財務省にまで火をつけた。
「このタイミングで何てことをいってくれたんだ!」とある財務省幹部は怒り心頭だが、それもそのはず。ジャーナリストの須田慎一郎氏がその背景を解説する。
「何としても増税に舵を切りたい財務省は、震災復興を名目に世論調査で過半の支持を得て、政府税制調査会で俎上に載せるなど、ようやく基幹税(所得税や法人税など)の増税に向けた地ならしを終えようとしていた。そんな千載一遇のチャンスに、たばこ税増税といった下手な横槍が入ると、すべてをブチ壊しかねない。
表向きは安住淳財務相や藤村修官房長官の反論を受けて、小宮山厚労相がトーンダウンしたかのように報じられていますが、そうではない。あの鼻っ柱が強い小宮山氏でさえ、たった1日で“青菜に塩”のようになってしまったように、裏では財務省の事務方が厚労省の事務方に相当強烈なプレッシャーをかけていたのです」
そもそも野田佳彦首相が財務相だった7月に「(たばこ増税を復興財源に充てるのは)税制を通じた『オヤジ狩り』みたいなもの」と発言していたのも、こうした財務省サイドの思惑が反映されたものであり、「財務省としてはここで増税対象を分散させるのではなく、基幹税の増税へと戦力を集中させるのが狙いだ」と須田氏はいう。
小宮山氏は禁煙推進議員連盟を立ち上げるなど、名うての「嫌煙派」として知られるが、「はっきりいえば、それくらいしか得意分野がなく、厚労省が抱えるさまざまな課題を問われても、何とか自分の土俵に持ち込みたくて、つい発言してしまったようです」(須田氏)
野田首相が力を込める「増税路線」の虎の尾を踏んでしまった格好の小宮山厚労相だが、こんな新政権の船出を見せつけられる国民の方がたまったものではない。