元仙台放送アナウンサーで震災直後の取材にあたり、現在は東京でフリーアナとして活躍する早坂まき子氏が、六ヶ月たった「震災のあと」を考える連載。第一回は、灯火を取り戻しつつある国分町の姿を伝える。
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仙台市中央にある国分町は、東北随一の歓楽街として知られています。震災直後こそお店は閉じていましたが、4月末にはガス・水道・電気が復旧し、ほとんどのお店が通常営業を再開していました。
4月末、私はそのなかのある一軒の居酒屋さんに伺いました。このお店はこぢんまりとして小さいのですが、捻り鉢巻きの元気な店主と活きの良い魚がウリで、お酒が飲めない私も会社の同僚たちと何度か顔を出していました。
「今はとりあえず食材が全部揃わなくても、お店は開けないと忘れられちゃうからね。お客は少なくてもやらないと」
お客さんの入りは7分くらい。いつもの笑顔を見て私がホッとしたのもつかの間、店主は厳しい内情を話してくれました。
「観光客が激減して、今のお客さんはボランティアや、仕事で仙台を訪れる人ばかりだから、みんなお酒もあんまり飲まないし、長居もしてくれない。そもそも夜9時を過ぎれば国分町全体が静かになってしまうからね。お客さんが多いように見えて、売り上げは半分以下なんだよ」
たしかに生活は震災以前と変わらないようにみえても、まだまだ人々はお酒を飲んでいられる気持ちではなかったのです。
しかし7月、国分町が活気に湧くイベントがありました。16、17日に開かれた『東北六魂祭』というお祭りです。これは東日本大震災を受けて被害に苦しむ中、東北六県のお祭りが一ヶ所に集結することで東北への観光を誘致すること、そして東北が震災にめげず復興しているということを全国に発信するために開催されました。あの大震災の後、初めての東北での大きなお祭りです。
東北六県のお祭りが集結するのは初めてということもあり、二日間の予想来場者数10万人だったところ、初日で約13万人・二日目で約23万人の人が訪れました。予想を遙かに上回る集客数です。それだけ人々は賑わいとか活気に飢えていたでしょう。
祭り会場で多くの家族連れの姿をみかけ、関東や九州から仙台に来たという人に出会ったとき、私は「東北のことを考えている人がこんなにも沢山いるのだな」と嬉しくなりました。日本全国からのお客さんの「被災地に何かがしたい」という温かい気持ちの表れだなとも思えました。
国分町のお店も、「すみません、満席です」と断られるほどの盛況ぶり。しかも、一軒ではなく三軒も! 断られて変なのですが、友人たちと「ああよかった。忙しいのがなによりだね」と喜んだものです。
観光も立派な被災地支援になります。ボランティアをすることに抵抗がある方や不安がある方は、震災の影響を大きく受けている東日本の飲食業界、ホテル・旅館業界も復興支援の対象だということを意識して、ぜひ、観光としてでも東北に足を運んでいただけたら幸いです。
【プロフィール】
早坂まき子。元仙台放送アナウンサー。六年在籍した仙台放送時代に東日本大震災に遭う。現在フリーアナウンサーとしてJ:COM被災地支援番組『週刊ボランティア情報 みんなのチカラ』司会担当。個人的な被災地支援活動もしながら、長期的にどのような支援が出来るか模索中。