スポーツ

田中将大は斎藤佑樹と水と油 ライバルなどとは思っていない

9月10日に行なわれた楽天イーグルス対日本ハムファイターズの田中将大投手と斎藤佑樹投手の“ライバル”対決は、楽天が4-1で勝利。田中は最終回に押し出しで1点を取られたものの、圧巻のピッチングを見せた。斎藤もプロ入りして初めての完投をするなど健闘した。この二人について、ノンフィクションライターの神田憲行氏がレポートする。

* * *
「あまりストレートに言うと、変なこと書かれちゃうからなー!」

記者会見の最後、おどけた田中将大の言葉が“ライバル”対決をどう感じていたか、物語っていた。田中は斎藤佑樹をライバルなどとは思っていない。

「ずっと比較されてて嫌な気もしたときがあったと思うんだけど……」という記者の質問に、

「ハイ! ハイ!」

と笑顔で頷き、「お互い切磋琢磨してきたという気持ちは?」と聞かれて、「正直ないです。(大学とプロと)住む世界が違うので、そこは違うと思います。面白くない(コメント)と思いますが、ないですね」と、断言した。

プロで四年間、ローテーション投手として白星を積み重ねてきた自負が、大学上がりの新人投手と比べられることを拒否した。斎藤投手関係の質問で記者会見が終わろうとした寸前、冒頭の台詞が飛び出したのだ。

仲が悪いというわけではないが、もともと性格的に「水と油」といわれる。松坂大輔はプロに進んだ後も、アマチュアに進んだ高校時代の対戦相手とメールのやりとりをして励まし続けたが、二人の間でそのような交遊は聞かない。

だが、「決勝戦の引き分け再試合」という伝説的戦いが、二人を因縁づけて捉える枠になってしまった。

田中はこの日の投球でメディアが煽る“ライバル”対決という枠にケリを付けたかったのだろう。斎藤に見せつけるのはもちろん、“ライバル”と煽るメディア、観客に対しても「これでもまだ二人を比べますか?」といわんかごときの圧倒的なピッチングだった。最終回に押し出し四球で一点を失うと、悔しさのあまりマウンドにしゃがみこんだ。

「なんか気持ち悪いですねー。九回に点を取られるのは嫌ですねー! 最終回に締まらないのは僕らしいかな。これは一生治らないですね」

それは完封を逃した悔しさだけでなく、完璧に斎藤を圧倒するチャンスを逸した嘆きだ。

一方の斎藤の試合後のコメントの、「この差は大きくない。全く追いつけないものではないと思う」とは、田中の「もうお前はライバルじゃない」というメッセージを受けとった、精一杯の反論だろう。球威も変化球のキレも「差は大きくない」といえないと、誰よりも本人がわかっているはずだから。

とはいえ、“ライバル”対決の経済効果は抜群だった。チケットは一週間前に完売し、観客数2万809人はオールスター戦を含めて今季3番目の入り。チケットやグッズなど全てを含んだ売り上げはこの日だけで1億円を突破した。

「いつもは6~7千万円程度。(地上波中継したフジテレビなどの)放映権がボーナスになりました」(楽天野球団関係者)

楽天が今回手にした放映権料は衛星中継の7~8倍、巨人戦に匹敵する金額だった。

今季は星野効果で年間シート購入が過去最高となるも、チームが下位を低迷したため観客数が伸び悩んでいた。試合当日は絶好の野球日よりの快晴、まさに球団にとって干天の慈雨になった。楽天だけでなく日本ハムも、改めて二人の対決がどれだけのカネを生むか注目しただろう。

田中がいかに抗おうとも、いろんな「大人の事情」をまといながら、二人の“ライバル”対決はこれからも続けられるに違いない。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン