【書評】:『珍日本超老伝』/都築響一著/ちくま文庫/1575円(税込)
いわずもがなだが、わが国は「超高齢社会」である。何せ75歳以上の占める割合は10%を超え(平成23年版高齢社会白書)、皆で頭を抱えているわけだが、果たして本当に困ったことなのか。本書を読むと、私たちは老人のパワーを侮っているのではないかと考えさせられる。
著者の都築響一は、秘宝館や村おこし施設などのおかしなスポットを追う写真ルポルタージュ『珍日本紀行』で名を馳せた人物。そうした旅の途中で出会った、パワフルな老人たちの生き様に迫ったのが本書なのである。
〈果てから果てへの旅で出会った変人のうち、もっともクリエイティブというか、多産にしてオレサマ人生を疾走していたのは、なぜか圧倒的にじいさんなのだった〉
いくつか例を挙げよう。
●35年間女性の裸だけを撮り続ける74歳のアマチュアカメラマン。
●世界を飛び回る78歳のオリンピック私設応援団長。
●70歳を過ぎてデビューした演歌歌手。
●87歳の現役エロビデオ俳優にして稀代のエロ物コレクター。
こんなとんでもないじいさんたち。その数、29人。
そんなひとり、東北サファリパークを裸一貫から成功させた熊久保勅夫氏(取材当時74歳)の言葉。
〈修羅場の下をくぐってきたからこそ、その先が見える〉
若輩者には吐けない台詞だ。
著者はこう確信する。彼らは自分の眼前のレールしか見えていないのだ、と。そして、誰か他の人が走っているか気にならない。ただ我が道を行っているのだ、と。
そんな「超老」たちの常識を超えたスタイルに、私たちは元気づけられる。
※SAPIO 2011年9月14日号