元仙台放送アナウンサーで震災直後の取材にあたり、現在は東京でフリーアナとして活躍する早坂まき子氏が考える連載「震災のあと」。第二回は、コミュニケーションの復興を伝える。
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仙台在住時から交流のある、宮城県名取市のとある女性から6月末にメールが入りました。
「もし使用していないソーイングセットがあったら、送ってくれないかしら……」
この女性は地元で、避難所での食事準備や配膳、地域の人たちへの声掛けなど個人的にボランティア活動をされている方です。私が仙台放送入社1年目に楽天イーグルスの取材中に、お嬢さんたちと球場で応援に来られていたこの方と出会いました。
その後もメールなどで駆け出しアナの私を励まし続けてくれた元気なお母さんです。震災後も私に貴重な現地の状況を教えてくれます。
ソーイングセットのメールをもらったときは「避難所や仮設住宅暮らしの方たちが洋服のお直しをしたいのだろうな」と思いました。確かにその使い道でもありましたが、もう一つは「コミュニケーションを図るため」でもありました。
私が現在司会をさせていただいているボランティア番組で、出演するボランティアの方が必ず口にするのが「被災者を一人にさせない」です。
9月になり、避難所が閉鎖される所が増えて、仮設住宅、もしくは自宅避難者の方が多くなりました。宮城県だけでも5月に406あった避難所が、8月末時点で172か所にまで減少。名取市の避難所は9月には全閉鎖されています。
それは復興への一歩であることはまちがいないのですが、それまで避難所では「○○町※丁目」など地域ごとに避難生活をしていた方たちが、バラバラの仮設住宅に移ることになるケースが増えているそうです。
すると何が起こるのか? 「隣に誰が住んでいるのかわからない」「どういう人かわからないのでお互い挨拶もしない」という現象が起こってしまうそうです。
都会では同じマンションでも交流がない、という話もよく聞きますが震災前は家族ぐるみでご近所付き合いがあったような地域に住んでいた方にとっては、生活環境がまるで変わってしまうそうです。
さらには「仕事もないから外出しない」「元気がでないからずっと部屋で寝ている」といった現象が起きてしまう。
この問題を解決させるためにいわゆる「茶飲み場所」的存在のコミュニケーションを図れる場所を作ろうと、地元自治体やNPOやNGOのボランティア団体などが精力的に活動しています。夏は足湯コーナーを設けたり、スイカ割りや金魚すくいの出店をだしたりと各仮設住宅で工夫しています。
メールをくれた名取の女性へは、私の友人たちから集めた数種類の針や、糸、マジックテープ、毛糸にミシンなど段ボール三箱を郵送しました。現在はそれらを使い、避難している方、地元の方、ボランティアなどが一ヶ所に集まって「即席手芸教室」が行われているそうです。お喋りしながら気分を和らげ、手先を動かし、交流を図っていく……。女性に人気のコミュニケーション方法です。
時間はかかるかもしれませんが、復興は物質的な衣食住だけではなく人と人とが顔を合わせるがコミュニケーション=「心の復興」も重要だと再認識しました。人に会い、挨拶をする、一言声を掛け合う。この何気ない交流が、仮設住宅生活では意識的に行わないといけないこと自体、いかに被災者の方が不自由で非日常におかれてしまっているかがわかりました。
【プロフィール】
早坂まき子。元仙台放送アナウンサー。六年在籍した仙台放送時代に東日本大震災に遭う。現在フリーアナウンサーとしてJ:COM被災地支援番組『週刊ボランティア情報 みんなのチカラ』司会担当。個人的な被災地支援活動もしながら、長期的にどのような支援が出来るか模索中。