元仙台放送アナウンサーで震災直後の取材にあたり、現在は東京でフリーアナとして活躍する早坂まき子氏が考える連載「震災のあと」。第三回は、子供たちへのボランティア活動を通じて、大人の役割について考える。
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この記事を読む方の中ではボランティアで、仕事で被災地へ行ったという方もいらっしゃるでしょう。私は仙台に住んでいたご縁もあって、被災地支援をしようという強力な仲間と東京で繋がることができました。その仲間たちと6月、宮城県の岩沼市、名取市、女川町の幼稚園・保育所計4か所に子供たちの慰問を行いました。
東日本大震災が起こった3月11日は、ちょうど卒園式や入園式準備のころでしたが震災の影響で幼稚園や保育所はほとんどのイベントが中止や延期となりました。そんな子供たちに少しでも笑顔になってもらおうと、NHK「英語であそぼ」で活躍する歌手のエリックさんと共に被災地へと向かいました。エリックさんは被災地支援を計画中に知人の紹介で知り合い、協力していただくことになった方です。
どこへ行ってもエリックさんの歌とギター演奏で子供たちは大はしゃぎ。テレビで見ていた歌手が目の前にいるのですから、子供たちは興奮して歓声をあげながら一緒に体を動かし、歌ってくれました。
中には額が汗ばむほど音楽にのって歌う子供も。私も以前「体操のお姉さん」として子供番組を担当していた経験をいかし、エリックさんのアシスタントとして子供たちと共に歌いました。
正直、私は被災地の幼稚園に行くのは不安でした。園長先生や保護者の了承を得ているとはいえ、宮城の子供たちは笑顔になれるだろうか……。大震災から3ヶ月後にあたるこの日、まだ余震も頻繁で緊急地震速報に怯える頃でした。
被災地のお母さんたちに聞くと震災後の子供たちの変化は多々あるようでした。「おしゃぶりをするようになったり、赤ちゃん返りをしたりする」「一人で眠れない」「震災関連のニュースをじっと見つめる」……。あれだけの被害をもたらした大震災を子供たちも小さな心と体で必死に受け止めているのです。
しかし、慰問で訪れたとある幼稚園の先生は、私たちを歓迎してくれました。
「笑顔や笑い声を思いっきり出せるのは久しぶり。素直に子供たちも嬉しいのだと思います」
今まで歌ったり体を動かしたりという日常が、非日常となっている中でエリックさんと一緒に少しの時間でも「日常」に戻れてよかったな、と手前みそながら思えた瞬間でした。
震災から半年が経過した今、子供たちがどのような思いを抱いているかは子供によって違います。ただ一つ言えるのは、少なからず震災後に恐怖や不安を経験してしまったということ。被災地が少しずつでも日常に戻るためにも、子供たちに笑顔になってほしいなと思います。
「子供が元気な笑顔を見せると、大人が安心するのよね」とあるお母さんが言ったこの言葉が、被災地の親心を映していると思いました。子供たちが日常を取り戻す環境を作ることが、大人たちの役目なのではないでしょうか。
【プロフィール】
早坂まき子。元仙台放送アナウンサー。六年在籍した仙台放送時代に東日本大震災に遭う。現在フリーアナウンサーとしてJ:COM被災地支援番組『週刊ボランティア情報 みんなのチカラ』司会担当。個人的な被災地支援活動もしながら、長期的にどのような支援が出来るか模索中。