肺がんには大別すると小細胞肺がん(約2割)と非小細胞肺がん(約8割)がある。小細胞がんは進行が早く、転移していることが多いので、一般的には化学療法が適用される。一方、非小細胞がんは局所に留まっていることが多いので、早期なら手術が適用される。
手術の方法には「開胸手術」と「胸腔鏡下手術」がある。開胸による手術は治療後も痛みが長く続き、負担が大きいが、「胸腔鏡下手術」は、体の側面に小さな穴を開け、内視鏡の一種である胸腔鏡を挿入し、がん部分を切除するため体への負担が小さい。
胸腔鏡下手術を積極的に導入しているのが熊本大学医学部附属病院だ。
「CT検査では、約5ミリ以上のがんなら約95%は発見できるので、早期発見が増えています。当院では、肺がんのステージがI期と診断された場合は、胸腔鏡下手術を第一選択とします。手術の対象となる患者さんのうち、約2割が開胸手術、約8割が胸腔鏡下手術です」(同院呼吸器外科科長・鈴木実教授)
胸腔鏡下手術も当然のことながら技術力が問われる。岩手医科大学附属病院の呼吸器外科・谷田達男教授は「肺がん治療では同じスタッフが年間約100症例について胸腔鏡下手術を担当し、テクニック的にも熟達しています」と胸を張る。
また、胸腔鏡下手術の発展型ともいえるのが「ダ・ヴィンチ手術(ロボット支援手術)」だ。内視鏡とロボットアームを患者の体内に挿入し、3Dモニターを見ながら手術をするシステムで、導入している病院はまだ少ない。金沢大学附属病院ではこの1月からダ・ヴィンチを導入した。
「ダ・ヴィンチは術者の手にあたるサージカルアームや鉗子の自由度が高くて動きに制約を受けにくい。がんの切除や縫合、結紮が容易にでき、呼吸器の領域でも大きなメリットがあるのです」(同院診療科外科呼吸器科長・小田誠教授)
※週刊ポスト2011年9月16・23日号