田中将大(楽天)と斎藤佑樹(日本ハム)が対峙した9月10日。バックネット裏から、特別な思いで見つめる二人の同級生がいた。
早実、早大で7年間、捕手として斎藤の球を受け続けてきた白川英聖氏。もう一人は田中の駒大苫小牧の同級生だった鷲谷修也氏。鷲谷氏は卒業後、アメリカの短大に進学して野球を続け、2009年にはワシントン・ナショナルズからドラフト指名を受けた元マイナー選手だ。二人とも、同級生の投球をスタンドで見るのは初めてのことだった。
ノンフィクションライターの柳川悠二氏が試合後、二人に話を聞いた。
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白川:今日の試合を見て、斎藤が10勝するためには、少し足りないものがあるのかなと思った。やっぱり三振が欲しい場面で狙って三振を取れるぐらいになってほしい。そう、最後の田中みたいに。
鷲谷:2009年のWBCの時、僕はアメリカで田中と食事し、試合も応援に行ったんです。キューバの打者が球威に驚くようなリアクションをしていた。「これが世界に通用する選手の実力なんだ」って思いました。
ナショナルズを解雇されたあと、僕は独立リーグの石川ミリオンスターズで野球を続けた。しかし、それも今年5月に辞めました。自分の中で、何歳までにこれぐらいのレベルにならないと厳しいというのがあって、それにほど遠いと石川で痛感したんです。
白川:僕は大学時代はレギュラー捕手にはなれなかった。その挫折があったからこそ、きっぱり野球を辞められた。今は、いち野球ファンとして、斎藤や田中のピッチングを楽しみたい。
――甲子園における延長再試合を戦った選手で、プロ野球選手として活躍しているのは、田中と斎藤だけだ。現在は大学編入試験を目指している鷲谷と、商社マンとして世界を相手にする仕事に就いた白川。二人の野球人としての夢は、田中と斎藤に託されている。
※週刊ポスト2011年9月30日号