中国で発表された二つの「金持ちランキング」が、中国社会の変化を如実に表す結果となっている。いま、中国では、どんな変化が起きているのか。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。
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9月に入り中国の経済界で注目される二つのランキングが発表された。
一つは中国企業連合会がまとめた「中国企業500強」(2011版)であり、もう一つが中国四川省成都市の民間調査機関・胡潤研究院の調べによる「2011胡潤百富榜」(中国の富豪百人)である。
まず「500強」企業だが、これは当然のこと国有大企業が圧倒的な存在感を見せつけた。トップは売上高で2兆元(約26兆円)に迫る中国石油化工集団。2位は中国石油天然気集団で売上高は1兆7210億元。3位は国家電網公司で売上高は1兆5290億元である。ベストスリーはすべて日本円で20兆円を超える売り上げを誇る猛烈ぶりだ。
4位以下の企業を並べてみると、中国工商銀行、中国移動、中国中鉄、中国鉄建、中国建設銀行、中国人寿、中国農業銀行というように、業種こそ通信から鉄道、銀行、保険と幅広いようだが、そのすべてが国有大企業というのが実態だ。まさしく中国経済が抱える最大の問題である「国進民退」を象徴する内容なのだ。
そして、もう一つのランキングは個人部門だ。こちらは官僚を筆頭に国有企業のトップなど、裏の収入を含めれば上位を独占する人々が欄外にいるため正確に中国の「富豪百人」を表現しているとは言い難いが、それでも中国社会の変化を如実に表す結果となっている点が興味深い。
ベストスリーを並べてみると、建設機械の三一集団のトップ・梁穏根(700億元=約9千100億円)、飲料メーカーの娃哈哈集団の宗慶后(680億元)、そしてインターネット検索大手の百度の李彦宏(560億元)である。
トップの梁は、2009年には同じランキングで20位、そして翌10年には4位となり、今年トップの座を射止めたのだが、これは中国が経済刺激策として巨額の財政出動をしたことで、インフラ建設に火が付き現場で建設機械の需要が高まって、保有する三一集団の株価が上昇したためだ。3位の百度の躍進は、ライバルであるグーグルが中国市場から撤退(これは完全な撤退とは言えないが)したことが大きく響いた。
そしてさらに特徴的なのがランキング全体に通ずる傾向だ。というのも、ベストスリーではある程度バラエティーに富んだランキングとなったものの、ベストテンは偏った傾向を見せているからだ。というのも10人のうち5人が不動産会社社長だからだ。つまり儲かったのは財政出動の恩恵が及んだ建設業と不動産だったというわけだ。
それにしても上位1000人の平均資産が59億元(約767億円)とは恐れ入る。