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原発避難者 辛い仮設住宅生活だが家族と過ごす時間増え喜ぶ

 福島第一原発から西へ約50km――標高1700mの安達太良山のすそ野、福島県大玉村に仮設住宅630戸が整然と立ち並ぶ。この仮設団地に住む今井美知恵さん(53才・富岡町出身)は現在、建設会社に勤める夫の浩二さん(57才)、中学3年生の里美さん(15才)、中学1年生の雄大くん(13才)の4人家族。

 震災前よりもおかずを減らして節約をしたり、自宅には10年間のローンが残ったりと辛い思いも味わっているが、それでも、仮設暮らしも悪いことばかりではないという。

 夕方になると車で子供たちを迎えにいく。それから夕食の準備を始める。この土地で取れた新鮮な野菜を丁寧に下ごしらえし、油で揚げる。

 狭いキッチンでは引火が心配なため、新聞紙を濡らしてフライパンの周りに敷き詰めた。茜色に染まる空においしそうな匂いが漂う。

 震災前は児童館に勤務していたときは朝7時の出勤で、子供と触れあう時間がなかった。毎朝“やっつけ”のようにご飯を急がせていた。子供が塾の日の夕食は別々に食べていた。

 いまは浩二さんが夜8時ころに帰宅してから、家族みんなで食卓を囲む。この夜、浩二さんはおいしそうにビールを飲んだ。

「いまは家族と過ごす時間がたっぷりあります。家族に『いってらっしゃい』『おかえり』といえることが、すごく贅沢に思えてうれしいですね」(美知恵さん)

 子供たちも、避難生活の中で新しい友達ができた。避難所で知り合い、同じ仮設団地で暮らす同級生たちが「一緒に遊ぼう」と毎日のように家にやってくる。

 美知恵さんが今後を見据える。

「長い目で見たら、やっぱりここで生活するしかない。住んでた町がなくなるのは寂しいですが、これが現実です」

※女性セブン2011年9月29日・10月6日号

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