一人の芸人が暴力団との親密交際の責任を取って身を引いただけ――そう思われていた島田紳助の引退劇が、芸能界全体を大きく揺るがし始めた。
「芸能に関わる人間が反社会的勢力と平気で付き合って、彼らの資金源にさえなっている。決して許されることではない」
安藤隆春・警察庁長官は常々こう発言し、“紳助だけじゃない”と捜査員に発破をかけている。そして、この10月1日、安藤長官の肝煎りで立ち上がる「極秘捜査チーム」に、一部の芸能関係者が戦々恐々だという。警視庁関係者が明かす。
「警視庁の丸の内署内に、極秘の芸能捜査班が編成されることになった。暴力団と繋がる芸能人やプロダクション関係者を広く挙げるためで、警視庁の組織犯罪対策部(組対)のメンバーを中心に、最低でも50人程度の所帯になる予定だ」
本庁に置かずにわざわざ所轄に捜査班を設置する狙いは、本庁とは別の予算を確保して、捜査戦力を充実させることにあるという。だが、都内でも芸能事務所が集中しているのは赤坂署や麻布署管内だ。なぜそこを前線基地に選ばず、丸の内署内に編成することになったのか。
「事務所を多く抱える所轄署では、一日署長でのタレント派遣や、警察OBの芸能プロへの再就職斡旋などで、お互いに“近すぎる関係”を作ってしまっているケースがある。また、丸の内署は公安部門が強く、保秘(秘密保持)が徹底される。芸能関係者と利害関係が薄くて、情報漏洩が未然に防げる丸の内署がいいということになった」(同前)
この用意周到さから見て、当局は相当の覚悟で「芸能界浄化」に取り組もうとしているようだ。ある組対の捜査員は、「すでに暴力団に近いとされる芸能プロ社長など、数人のターゲットは定まっている。この布陣の最初の仕事はレコード大賞や紅白歌合戦の人選の時期に重なり、そこでどれだけ睨みを利かせられるかが勝負」と意気込む。
ズブズブの関係に足を突っ込んできたテレビ局の体質にもメスが入ることになりそうだ。
※週刊ポスト2011年9月30日号