ヤマト運輸の中興の祖・小倉昌男元会長の著書『経営学』は、刊行から12年経った今でも版を重ね続け、現在33刷20万部。愛読者は小倉氏よりも一回り若い50~60代に多いが、20代の若手経営者にもきっと響くものがあるはずだ。“渋谷のギャル社長”として農ギャルブームをつくった藤田志穂氏(26)に本書を通読してもらった。
――小倉昌男氏のこと、ご存じでしたか?
「実は知りませんでした。自己啓発系や好きなスポーツ選手の本などはよく読むのですが、今回読ませていただき本当に色々な事を考えるキッカケになって面白かったです」
――普段、経営本は読みますか?
「『もしドラ』は映画化の時に読みました。全部が全部難しい内容じゃなかったので、若い子が経営に興味を持つキッカケにはなるな、と思いました。あとは、松下幸之助さんの本を知人に勧められて読みました。キーワードごとに3ページずつ短くまとめられている本が読みやすかった」
――『経営学』はいかがでした?
「何か新しい事業を始めるにあたって、周囲の反対があったり、上手くいかない時があっても、その環境をどう変えて、どう仲間を導いていくかが経営者の使命であると考えているところが、勉強になりました」
――藤田さんも周囲の反対があったのですか?
「自分の前では応援してくれるのに、陰で『ギャルに社長なんかできるわけない』と反対されていることはよくありました(笑い)」
――『経営学』には、取引先であった三越の岡田茂社長の“押し売り”に耐えかねて、商品輸送の取引をやめるくだりがあります。
「押し売りはなかったですけど、女の子が社長ということで、単純に『会いたい』とかいってくるのを断わるのが大変でしたね。一度、ある行政の人が個人的に来られて、『キャバクラ農園をやらないか』と、ちょっとギャルをバカにしたような提案をしてきたことがあったんです。お断わりしたら、『農業なんかやめちまえ』みたいな手紙が来て、本当にビックリでショックでした」
――第15章の「経営リーダー10の条件」には「身銭を切ること」とあります。
「私の場合、経営者としては年齢が若かったのもあって、お会いする方が年上ばかりで、おごってもらうことが多かったです。ただ、最近は年下の子が増えてきて、私が払う時が少しずつですが増えてきましたね」
※週刊ポスト2011年9月30日号