統一球の導入により、両リーグの平均打率は.269(2010年)→.247(2011年)、1試合あたりの平均本塁打は0.93本→0.55本(同)と、大幅に数字を下げている。ところが、打撃不振にあえぐ各球団首脳陣は、そう簡単に強い打球を打てるように鍛え直すこともできず、安易に「スモールボール」(※)を展開して、ますます試合をつまらなくしている。とくに巨人と阪神の露骨さには呆れてしまう。
巨人は、8月30日の横浜戦でプロ入り初の5番に抜擢された坂本が初回から送りバント。9月8日の中日戦では首位打者の長野にもバントをさせた。原監督の消極的な姿勢に「記者席からは失笑が漏れていた」(巨人軍番記者)。
阪神も9月6日からの広島3連戦では実に7回のバント作戦。試合こそ3連勝したが「こんな弱腰では乱セを抜け出せない」(阪神番記者)と酷評され、続く首位ヤクルトとの3連戦は3連敗を喫した。阪神の元監督で野球評論家の安藤統男氏がいう。
「統一球になって、ヤクルトのようにしっかりしたクローザーがいるところでは1点、2点はセーフティーリードになってしまった。本来、野球というスポーツの醍醐味は、ゲームセットまで気が抜けないところ。
ところが今年は3点差なら最後まで観ないでファンが帰ってしまう。いくら統一球が打者に不利とはいえ、シーズン中に対応できないのはプロとして恥ずかしい。打者は技術不足を猛省すべきです」
そもそも「飛ばないボール」の本家・メジャーリーグでは、昨年の1試合あたりのホームラン数は0.91本。「飛ぶボール」を使っていた当時の日本の水準とほぼ同等である。要は日本のプロ野球の打撃は「飛ばないボール」を使うレベルに達していなかったということだ。
下手くそを露呈しただけで終わるなら、「国際標準」は将来目標とし、ひとまず「飛ぶボール」に戻した方が、ファンのためではないか。
※スモールボール/盗塁やヒットエンドラン、バントなど機動力と小技を駆使して確実に1点をもぎ取ろうとするプレースタイルのこと。ロサンゼルス・ドジャースが生み出したとされ、かつては「ドジャース戦法」と呼ばれていた。日本ではスモールベースボールとも呼ばれる。
※週刊ポスト2011年9月30日号