白澤卓二氏は1958年生まれ。順天堂大学大学院医学研究科・加齢制御医学講座教授。アンチエイジングの第一人者として著書やテレビ出演も多い白澤氏によると、男の長寿のためにはオキシトシンという「愛情ホルモン」が必要だという。以下、白澤氏による解説だ。
* * *
妻や恋人、友達がいない。職場や学校、あるいは家庭内で孤立している……。心身を孤独に蝕まれる男性が増えている。日本民医連によると、70歳未満の孤独死の9割以上が男性。
そうした「孤独病」には文字通り「手当て」が効くようだ。不安な時、手を握ってもらってホッとしたり、痛む患部をさすってもらってラクになった経験があるだろう、これが「手当て」だ。
手や足、背中にやさしく均一なタッチで触れると、皮膚の接触受容体に信号が送られ、脳下垂体から「オキシトシン」というホルモンが分泌される。オキシトシンは、男性の勃起や女性のオーガズムなどの生理学的反応、母親が赤ちゃんに授乳したり、子どもに愛情を注ぐ行動などを制御している。「愛情ホルモン」とも呼ばれている。
男はオキシトシンの分泌量が少なく、弱みを人にさらけだせない。生物学的に、孤独に陥りやすいと言える。もし「孤男」化する自分に気づいたら、【1】ペットを飼って、いつもやさしくなでる【2】手相に強くなる【3】マッサージ名人になる――。これらでタッチの機会が飛躍的に増え、自分も相手もオキシトシンの分泌が一気に向上する。
米ピッツバーグ大などの研究では、セックスの前後に「パートナーとの温かい触れ合い」があるとオキシトシン濃度が上昇し、カップルは寛大になって関係は円満になった。米エモリー大学の研究でも、オキシトシンに夫婦げんかを鎮める効果が認められている。
言葉によるコミュニケーションが不得意でも、「手当て」によるコミュニケーションで脳を活性化し、相手との絆と愛情を強めることができそうだ。
※週刊ポスト2011年9月30日号