みうらじゅんは、1958年京都生まれ。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャン、ラジオDJなど幅広いジャンルで活躍。1997年「マイブーム」で流行語大賞受賞。仏教への造詣が深く、『見仏記』『マイ仏教』などの著書もある彼が、遺影写真について考察する。
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今まで考えたこともなかったが、そもそも葬式にはなぜ遺影があるのだろうか? 実は、葬式に出席した人に、故人が最後のアイサツをするという意味で遺影は飾られているらしい。
ところで、遺影にはもともとタブーがあったらしい。赤い服、パジャマ、白いネクタイ、帽子、そしてサングラス!
年配の方はサングラスに抵抗があるんだなという経験をしたことがある。私は5年前から写真館で家族写真を撮るようにしているが、記念すべき第一回撮影の時、かなりの高齢の店主は私のサングラスが、どうもひっかかったらしい。
できた写真を見たら、サングラスの上に眼が書いてあった! もともとうっすらと映ってる眼の上に、バッチバチの眼が書いてある!! これじゃ、レディー・ガガだ!
次の年からは息子さんが、「あの人はみうらじゅんさんっていって、サングラスが売りなんだよ」ってオヤジさんにいったらしく、レディー・ガガではなくなったが、ヘタすると、みなさんの遺影もそうなる危険が潜んでいる。
最近、遺影タブーの中でも、サングラスと帽子くらいは少しずつ認知されてきているという話だが、みなさんの遺影がレディー・ガガになる可能性は、今でも少なからずあるのだ。
※週刊ポスト2011年9月30日号