ご当地料理の中でも、今年特に注目したいのが、東北の名物料理。……というわけで、グルメ雑誌『アリガット』誌の元編集長・小川フミオ氏がセレクトした『跳人』(東京・神田)の「つゆ焼きそば」を紹介します!
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ご当地名物として、いま人気が高いのが、青森県黒石市のつゆ焼きそば。ラーメンのようでいて焼きそばの味わいがあり、うどん好きも気に入る、個性的なうまさだ。
東京では神田駅前の津軽郷土料理居酒屋『跳人』の昼の人気メニューだ。オーナーの小野幸春さんは『帝国ホテル東京』で30年間ソムリエを務めていたという特異な経歴を持つ。ホテルを辞めたあと、青森県出身の小野さんは「郷土の味を提供したい」と同店を開いた。
「つゆ焼きそばは昭和30年代に、ある食堂のおばあちゃんが、『この方が熱々で寒い季節にはおいしい』と、焼きそばをつゆに入れて出していたのが始まり。あれ、おいしかったね、という記憶を頼りに町おこしのひとつとして提供され始めました」
決まったレシピはないそうだが、黒石の製麺所で作られる平打ち太麺を使うのが唯一の決まり。ラーメンとうどんが合体したような味わいだ。
その麺を炒めてできる黒石焼きそばをスープに入れるとつゆ焼きそばになる。『跳人』では、自家製のウスターソースとともに炒めた麺に、煮干しでとった出汁をかける。それがほかにない味になる。スープは最後の一滴までおいしい。
なんだか、東北の故郷の思い出まで食べている気になる。
■『跳人』の「つゆ焼きそば」 700円
【住所】東京都千代田区鍛冶町2-2-9 第2登栄ビルB1
【営業時間】11時半~14時、17~24時(LO 23時)
【定休日】日、祝(ランチは土休み)
【カード】可
店名は、青森ねぶた祭りの踊り手のこと。ランチでは写真の「つゆ焼きそば」に加え、黒石焼きそばや鶏唐揚げ(青森産「桜姫」)など、津軽の人に親しみ深いものが食べられる。夜は地元から取り寄せた旬の食材を使った料理の数々が楽しめる。オーナーがソムリエだけあってワインの種類も豊富。
撮影■岩本朗
※週刊ポスト2011年9月30日号