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ヤマト運輸の被災地対応 元会長の教えをドライバー守り実現

全国に配送ネットワークを張り巡らせるヤマト運輸は、東日本大震災で東北エリアに大きな被害を被った。全半壊の事業所は20店、車両は58台が全損した。5人の社員が亡くなり、1人が行方不明だ。

しかし、この災害は、同社の小倉昌男元会長の著書『経営学』の教えが社員に浸透していることを図らずも証明する機会となった。

地震発生後、東京・銀座の本社に対策本部が置かれたが、数日の間は現地との通信が断たれ、社員の安否確認もままならない状況だった。

そんな中、被災地のセールスドライバー(SD)たちは、避難所間の物資の供給格差を解消すべく、3月15日から気仙沼・志津川・女川などのエリアで自発的に救援物資の配送を始めた。自らも被災者だったが、運び手不足でただ積まれるしかない大切な支援物資を黙って見ていられなかった。

そうして現場主導で生まれたのが「救援物資輸送協力隊」だ。小口配送のノウハウを生かして、食品や毛布といった緊急物資を自治体の倉庫などから避難所や病院に配送した。

現場独自のこうした支援活動を本社が追認し、3月23日に正式に組織化した。2トントラック200台と人員500人を現地に派遣。料金をどうするかなどは未定だったが、まずは走り出した。これこそ、小倉氏が説いた「サービスが先、利益は後」の発想である。

現場SDの機転は、燃料確保の面でも貢献した。

被災地ではガソリン不足が深刻化していた。営業車両の燃料はなんとか確保できたが、社員の出勤用の燃料がネックになった。

そこで、役割分担が生まれた。非番のSDがガソリンスタンドに並び、給油後、他のSDを迎えに行き、帰りは次の非番のSDがそのクルマを受け取り、またガソリンスタンドに並ぶ――。SD同士の連携プレーが実を結び、3月24日に岩手・宮城・福島の3県で集配再開が実現できた。

※週刊ポスト2011年9月30日号

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