「きんは100才、ぎんも100才」の名フレーズで人気だったきんさん、ぎんさん。実はぎんさんには5人の娘がいて、亡くなった次女を除くと、98才の長女から89才の五女まで4人揃って元気に暮らしている。4人の年齢を合算すると、371才で、平均年齢は93才に限りなく近い。
4姉妹は、いまもドライブを楽しんでいる。毎月1回、隣県の岐阜市の山峡にある“お薬師さん(岩井山延算寺)”にお参りに出かけるのだ。片道2時間の運転をするのは、89才の五女・美根代さん。還暦を迎えた記念にと60才で運転免許を取得した美根代さんは、これまで約30年間、無事故・無違反の優秀ドライバー。
「ほーら、ゴールドのな、線がちゃんとはいっとるでしょ。“ぎん”じゃのうて、免許証は“きん”だわさ」
免許証を見せながら美根代さんは、得意満面の顔になって胸を叩いた。
驚いたのは、4姉妹が随分と遠方までドライブをしていることだった。名古屋市から伊勢湾と三河湾を挟んで知多半島がのびている。この半島に「知多四国八十八か所霊場」がある。弘法大師ゆかりの“お遍路巡り”のコースを、美根代さんが運転する乗用車は、軽快な音を響かせひた走る。
「いっぺんにはよう行かんから、最初の日はな、88の寺のうち、1番から15番。そいで夕方までにうちに戻って、次の日は16番から30番までの寺を巡るっていう具合でな、これを4~5日かけて繰り返し、八十八か所をな、みんなで回って歩くんだがね」(美根代さん)
聞けば、4姉妹はこの霊場巡りを繰り返し、これまで100回近く出かけているという。ほどなく90才になるいちばん下の妹が運転し、同乗するのは、90才をとうに超えた3人の姉たち。いやあ、大丈夫なのかと、人ごとながら気になって仕方がないが、三女の千多代さん(93)がこう喝破する。
「そりゃあ、最初はな、美根代が免許取るちゅうたときは、“やめときゃあ”いうて猛反対したよ。ほんでも、いまは名ドライバーだでよー。この人に乗せてもらうのが、誰が運転するよりも安心だで。おい、もうちょっと、スピード出せ、出せちゅうて、発破かけるようになってまったがね」
これを受けて、美根代さんが、苦笑まじりでこういう。
「やっぱしな、高速道はもたもた走っとれんでよー、ビューッと飛ばすんだわさ。姉さんたちは、えらいスピードにな、免疫ができてきたがね」
全長250kmともいわれる知多半島の霊場巡りに、4姉妹の意気込みは高まるばかりなのだ。
※女性セブン2011年9月29日・10月6日号