美しさと演技に魅せられた昭和の名花――「演技力と美貌を兼ね備えている女優」「昭和期に活躍した主演映画のある女優」という2つの条件から35名の映画関係者が各3名ずつの女優をリストアップ。得票数の多い順で「昭和の名女優」トップ5は以下の通り。
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胸を躍らせ映画館に通い詰めたあの時代。銀幕の女優たちはまさに光り輝いていた。彼女たちが現代の女優にはない魅力にあふれていたのはなぜか。その大きな理由のひとつが「演技力」だ。
アンケートの結果は、よくある「好きな女優ランキング」とは一線を画すものとなった。美しいだけでなく、観る者をうならせる演技派たちが上位を占めた。
1位は昨年12月に肺がんで亡くなった高峰秀子。『浮雲』(成瀬巳喜男監督)『二十四の瞳』(木下惠介監督)などの名作に数多く出演した大女優の卓越した演技力は、子役時代から培われた。6歳にして60人のオーディションを勝ち抜き、映画『母』でデビュー。以降、天才の名をほしいままにした。清楚な女教師からストリッパーまでを演じきる幅の広さは、映画業界人からも驚嘆される。
2位には「美人の代名詞」原節子がランクインした。現代においても伝説の女優として神格化されている原は、かつて「ルックス優先」と揶揄されたこともあった。しかし『東京物語』の名演を挙げるまでもなく、小津安二郎監督ら昭和映画黄金期の名監督たちの信頼は圧倒的である。
3位の田中絹代には誰も異論がないところだろう。出演作がカンヌ・ベルリン・ヴェネチアの世界三大映画祭すべてを受賞していることもあり、世界各国に熱烈なファンがいる。戦後に活躍した女優たちが上位を占める中で、4位の夏目雅子の存在は異色だ。『鬼龍院花子の生涯』(五社英雄監督)では、清廉なイメージを捨て去るかのようなヌードシーンを披露。女優デビュー当初こそ「お嬢さん芸」といわれたが、出演作を重ねるにつれ凄みは増していった。業界からは「年齢を重ねた彼女の演技が観たかった」と惜しむ声が聞こえてくる。
現在もNHK連続ドラマ『おひさま』やCMで活躍する若尾文子は5位。山本冨士子や京マチ子と並ぶ大映の看板女優として名を馳せた。匂いたつ妖艶さは、すでに二十代の頃から完成されていた。
※週刊ポスト2011年9月30日号