東日本が未曾有の災害に見舞われた2011年。復興を願う気持ちをポケットマネーに託して寄付を続けていこうという人も多いだろう。街頭の募金活動に協力するのもいいが、もっと「おトク」に特定の地域を応援できる方法がある。いわゆる「ふるさと納税」などの寄付金控除の制度を利用するのだ。その仕組みを税理士の田中卓也氏が解説する。
* * *
ふるさと納税は寄付金控除の一部で、特定の地方自治体に寄付をすることで、所得税や住民税が控除される仕組みのこと。要は寄付をすることで本来支払うべき税金が減ったり、取り戻すことができるという制度だ。寄付金控除の制度自体は従来からあるが、平成20年に地方自治体に対する寄付の税制優遇が拡大されたことから「ふるさと納税」と呼ばれている。
自治体によってはふるさと納税をしてくれた人に地元の特産品を贈るといった特典を用意しているところもあり、自治体を応援しながらトクできると人気を呼んでいる。
「納税」というネーミングから、税の納付先を国や住所地の自治体からふるさとの自治体に変更できる制度だと勘違いされることも多いが、この制度は納税ではなく寄付であることに注意してほしい。国に支払う所得税と住所地に支払う住民税が軽減されるので結果として納税先を変えるような効果は生じるが、控除される金額は寄付した金額を必ず下回るので、金銭的にトクをすることはないし、「持ち出し」は必ず発生する。
実際に控除されるのは2000円を超える額からで、以下の計算式で算出できる。
【ふるさと納税による節税額の計算方法】
〈A〉所得税控除額
ふるさと納税額-2000円×所得税率
〈B〉住民税基本控除額
ふるさと納税額-2000円×住民税率10%
〈C〉住民税特別控除額
ふるさと納税額-2000円(90%-所得税率)
→軽減される税額=A+B+C
たとえば年間の課税所得が300万円の人が2万円をふるさと納税した場合所得金額から1万8000円が控除され、課税所得金額が少なくなる。住民税では寄附金控除対象金額の1割を原則とする住民税基本控除額と8割にあたる住民税特別控除額が住民税から税額控除されるため節税メリットは1万8000円となる。
つまり、2万円寄付すると1万8000円減税され、結果として2000円の負担で2万円を応援したい自治体に寄付ができることになる。通常の寄付金控除だと上の計算式のAとBの控除しか受けられないが、ふるさと納税ではCの控除も合わせて受けられるので少ない負担で寄付ができるというわけだ。
さらに一部の自治体では、ふるさと納税をしてくれた人に特典を用意している。中には、「紅ズワイガニ詰め合わせ、鬼太郎の好きなビーフカレー8個セット、千代むすび大吟醸など12種から1点選択」(鳥取県境港市、1万円以上寄付)。「ボイル香住ガニ(ベニズワイガニ)、干物4種セット、但馬牛肉、村岡産コシヒカリ8キロなどから1点選択」(兵庫県香美町、1万円以上寄付)などの豪華な特典も。
ほかにも、鳥取県米子市では3000円以上の寄付でどらやきやお茶、市内の公的施設の割引券など13点が入った「米子市民体験パック」が贈られるほか、1万円以上寄付するとさらに51種類もの特典から1点、3万円以上の寄付なら2点を選択できる。さらには「オホーツクの流氷」(北海道紋別市)、「だんじり祭りミニはっぴ」(大阪府岸和田市)といったユニークなプレゼントを用意している自治体もあり、寄付する額によっては実質的に負担した額を上回る特典を受けられる場合もある。
寄付する先は出身地や被災地に限らず、自由に選ぶことができるのでこうした特典目当てに何の関係もない自治体に分散して寄付し、多くのプレゼントを受け取っている「ふるさと納税長者」もいるという。ただし、被災地の中には震災後にこうした特典を中止した自治体もある。
※マネーポスト2011年9月号