「ワシが川藤や!」。代打一筋19年、「浪速の春団治」といわれた元阪神タイガースの川藤幸三さんの爆笑インタビュー。最終回は「川藤、TUBEのコンサートで歌う!?」。(聞き手=神田憲行)
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――いま、一番気になる選手は誰ですか。
川藤:うーん、やっぱりねぇ、金本(知憲・阪神タイガース)やねえ。金本はいま自分の最後の野球人生かけた、最後のもがきをやっとると思うんやね。これはベテラン選手になっていよいよ近づいてきたかなと感じだしたときに、人にはわからない葛藤というものがあるんですよね。
金本ぐらいになると監督や社長が肩叩くというのはできんのですわ。引退していく、いかんというのはあいつの個人のことやから。あいつの腹でしか決められん、自分で切腹するしかない。介錯も誰もいない、まあいうたらね竹光で自分の腹を切るといっしょやからね。歯がゆくて歯がゆくてしょうがないと思います。
――シーズン終盤になると、ベテランの気持ちは、川藤さんに痛いほどわかるでしょうね。
川藤:ワシがいつもいのうは「簡単に腹切るもんやないぞ」。自分から辞めるな、ということやね。ワシはプロ野球生活19年をずっと補欠で生きてきた選手やから、金本みたいなスターとは立場が違う。スターは晩節を汚さんようにとか、いろいろ先を見据えた辞め方もあるやろうけれど、ワシら実績のない人間は1年でも長くこの世界で生きていきたい。このインタビューの最初で実社会とプロ野球の共通点として「生き抜くことの大切さ」を言うたけど、それや。
(このインタビューは9月17日、阪神甲子園球場で行われたTUBEのコンサートで川藤さんに用意された控え室で行われた。川藤さんはコンサートにサプライズゲスト出演して「六甲おろし」を歌うのだ。川藤さんの後ろのハンガーには現役時代の背番号「4」のユニフォームがかかっていた)
川藤:これか? ユニフォームきてくれいうから持ってきたわ。コンサートに出さしてもらうなんて初めてやて。そら緊張してるやん(笑)。ガタガタしとるわ(笑)。まあ、いろんな経験をさしてもろとる。こういう場を与えてもらえたというだけで有り難いことや。そしたら精一杯やる。これも生き抜くがための、有り難いことなんですよ。
【川藤幸三さんプロフィール】
1949年、福井県生まれ、62歳。福井・若狭高からドラフト9位で阪神入り。現役生活19年のほとんどを代打家業で送り、85年の阪神日本一にも貢献した。生涯安打数211、本塁打数16。現在はプロ野球評論家と建設会社社長という二足のわらじを履く。最新刊に「代打人生論~ピンチで必要とされる生き方~」(扶桑社新書)