東日本大震災や永田町の政治空白に乗じ、尖閣諸島の奪取を企む中国。6月、1000隻の武装漁船団で上陸を計画していた事実を本誌SAPIOは暴露したが、今後、彼らがさらに行動をエスカレートさせるのは必至だ。日本政府はどのように対抗すべきなのか。軍事アナリストの小川和久氏が提言する。
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尖閣諸島は日本が実効支配しているがそれをより強固なものにするため、陸上自衛隊の沿岸監視隊を駐屯させる。防衛省は与那国島に200人規模の沿岸監視隊を置くプランがあり、建設費などを来年度の概算要求に盛り込む方針というが、私の考えでは、同島に駐屯すべきは、警備任務や災害派遣の主力となる普通科(歩兵)部隊で、沿岸監視隊は尖閣にこそ配備すべきである。
沿岸監視隊というのは北海道の稚内、礼文島、標津に置かれてきた陸上自衛隊の小規模な部隊。ロシアとの国境地域の動向を把握するのが任務だ。攻撃的な性格の部隊ではないので、ソ連・ロシアから反発が出たことはない。
長崎県対馬上島の北端の海上自衛隊上対馬警備所には、焦点距離5200ミリの望遠鏡があり、対馬海峡や50km先の韓国の監視を続けている。倒立した像をモニターで正立させてウォッチするわけだが、釜山を走る車の中が分かるほどの精度を持っている。
尖閣にもこれと同じような監視部隊を置くべきだと言うと、腹の据わっていない政治家たちは「中国も軍隊を送り込んで衝突するのではないか」と躊躇・逡巡するかもしれない。
そこで、たとえば尖閣が外国勢力に占拠された場合を想定し、奪回するための日米共同訓練を行ない、上陸した陸自の部隊をそのまま尖閣に置いてくる。部隊は最初のうちはテントやプレハブ生活から始める。万一に備え、機関銃や対戦車火器、携行地対空ミサイルぐらいは装備しておく。
そして尖閣に配備された部隊が攻撃を受けないよう、海空自衛隊と米軍が共同で周辺の防衛にあたり、何年かかっても中国との対峙を続ける姿勢を貫く。その間にできるだけ早く必要な施設を建設してしまうのだ。
※SAPIO2011年10月5日号