国際情報

中国企業 ずさんな工場に当局が閉鎖命令で価格競争力に陰り

 中国企業といえば、これまで低い人件費とあいまいな環境基準による低コスト体質で、高い競争力を誇ってきた。だが、そうした環境に、大きな変化が現れているという。ジャーナリストの富坂聰氏が解説する。

 * * *
 中国浙江省で起きた高速列車衝突事故で明らかになった“民意”の高まりは、共産党が圧倒的な力をふるってきたこれまでの支配関係に変化をもたらそうとしている。

 そのことを象徴する事件が起きたのは、高速鉄道事故と同じ浙江省である。きっかけは今月中旬、大雨により同地で太陽光パネルを製造する工場――ニューヨークにも上場している企業で晶科能源という大きな企業である――から有毒物質が流れ出すという事件だった。

 近くを流れる川の魚が大量死したことで住民が怒り、これが猛烈な抗議へと発展したのだが、ここまではよくある話だ。驚きは最終的に当局が取った措置である。なんと工場に閉鎖を命じてしまったのだ。

 以前であれば、住民側が抗議をしても企業側はなしのつぶてで、抗議行動が高まり過ぎれば公安が出動して住民を抑え込むのが当たり前であった。とくに今回のように地域の税収にとって大きな存在であれば尚更だ。そのことを考えればまさに隔世の感といった印象を受けるのだ。

 住民の抗議で行政が従う「民高政低」は、二年前の広東省のゴミ処理施設の問題で見られたが、その後、高速鉄道事故での反応やその後に起きた大連市での危険物を保管した工場の立ち退き問題など、一つの傾向として定着しつつあるようだ。

 これは二つの意味で中国経済に大きな影響を及ぼすと考えられる。一つはコストの問題だ。中国はこれまで環境基準などを無視してきたことで価格競争力を維持してきた面が否めないのだが、今後はそれが厳しく制限されるのである。

 そしてもう一つは、これにともない外資の誘致でも同じような配慮が欠かせなくなり、中国に進出する企業にとって従来ほど中国が魅力的な土地ではなくなる点だ。

 現在、中国は太陽光パネル生産では世界でトップの座を謳歌しているが、全国的に見れば晶科能源のように環境対策でずさんなことをしている工場が圧倒的に多いはずだ。そしてもし今後、それらの工場すべてに住民の厳しい目が向けられてゆくことになれば、中国企業が持っていた価格競争力という強みにも確実に陰りが訪れることになるだろう。


関連キーワード

トピックス

百合子さまは残された3人の仲を最後まで気にかけられたという(2023年6月、東京・港区)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
公益通報されていた世耕弘成・前党参院幹事長(時事通信フォト)
【スクープ】世耕弘成氏、自らが理事長を務める近畿大学で公益通報されていた 教職員組合が「大学を自身の政治活動に利用、私物化している」と告発
週刊ポスト
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 小沢一郎が吠えた「最後の政権交代を実現する」ほか
NEWSポストセブン