円高と株安に苦しむ日本経済とは裏腹に、霞が関は今まさに“野田特需”に沸いている。震災復興の3次補正予算に加えて、その先の来年度予算の概算要求締め切り(9月末)に向け、各省庁が事業予算を積み上げているのだ。
例年の概算要求では、「財務省vs他省庁」のバトルが繰り広げられるが、ほとんどは予算配分権を握る財務官僚の激辛査定に跳ね返され、各省庁の役人が臍を噛む光景が繰り返されてきた。
ところが、今年は様相が全く違う。財務省は8月の時点で各省庁に「復興関連予算は青天井だ。遠慮しないで要求してくれて構わない」と太っ腹な姿勢を見せ、野田首相も9月20日の閣僚委員会で、
「青天井でいい。しっかりと要求を出していただく」
と、財務官僚と全く同じ言い方をした。
それを受けて各省庁は、「こんな機会は後にはない」(国交省中堅)と、嬉々として予算獲得の口実を次々とひねり出している。
国交省が力を入れるのは青森から宮城の太平洋沿いを繋ぐ三陸沿岸道路の建設だ。全360kmのうち、震災前に開通していたのは129kmだけ。それを一気に全線開通させるというのだが、そもそも半分以下しか建設されなかった理由は、費用対効果が低かったからだ。国交省は「復興の象徴だ」「津波発生時には堤防代わりになる」と屁理屈をこねているが、本音では「今なら予算が取れる」と考えているのは間違いない。
他省庁も同様だ。文科省は「スポーツ庁」、環境省は「原子力安全庁」の創設費用を盛り込む方針を決め、来年度予算は「史上最大規模となるのは確実」という見方が強い。
その展開こそ財務省の狙いなのだ。経済評論家の三橋貴明氏が喝破する。
「所得税や住民税の復興増税分は3次補正で使い切るものです。それなのに来年春からの12年度予算も青天井で復興事業を要求していいというなら、その分の財源をどうするつもりなのか。明らかに、各省に大型予算を要求させ、“財源が足りないから、あとは消費税増税しかない”というムードをつくるためでしょう。しかし、財政健全化を唱えてきた財務省が、増税するために“無駄事業でも構わないから予算を膨らませろ”というのは矛盾としかいいようがない」
※週刊ポスト2011年10月7日号