9月19日の脱原発集会に6万人集合--その後、デモ行進も行われたが、一部参加者と警備する警察官の間に「デモ慣れ」への温度差があったと指摘するのは、作家で五感生活研究所の山下柚実氏だ。以下、山下氏の解説だ。
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震災と福島・原発事故から半年が過ぎ、脱原発の集会やデモが活性化しています。9月19日には、ノーベル文学賞受賞作家・大江健三郎氏をはじめとする文化人の呼びかけで、東京・明治公園「さようなら原発 5万人集会」が開催されました。
会場には、福島からの参加者をはじめ、子ども連れの母親の姿も。なんと「5万人」に上乗せ1万人を超える人々が押しかけ、会場に入りきれず歩道・車道にあふれ出しました。
大規模な脱原発デモの現場で、実は、過去には見られなかったちょっと奇妙な現象が発生していたのです。
19日の「敬老の日」にちなんで、というわけでもないでしょうが、デモの中には60歳以上の還暦を過ぎた「高齢者」の姿が目立った。若い頃、大学闘争や学生運動でならした元闘士たち、市民運動家やオールド左翼といった面々が、一堂に会したためでしょう。
デモ行進に入って路上で噴出したのはなんと、デモを整理する警察官へのダメ出し。「警察官があまりにもデモに慣れていない」「デモ隊整理の技術が未熟すぎて、歩き出すのに三時間以上待たされた」
たしかに6万人を順繰りに道路へ送り出し、車を制御しながらデモの隊列をスムーズに流すには、それなりの技術が必要のはず。しかし、今の若い警官は大規模なデモに対応した体験がほとんどなく、交通整理しか知らないためか、デモの隊列がスムーズに流れていかない事態に。
「後ろが詰まっているよ!」とデモ隊からの指示によって、慌てふためいて警察官が動く、といった奇妙な光景も見られました。
デモの隊列を警官がいくつも分断してしまったため、間が100メートル以上あいてしまったコースも。そのせいで歩き終えるまで時間がかかった、と不満が噴出。「年寄りや子どもが歩くデモだというのに、慣れない警察官のせいで体力的に大変だった」とおかんむりの参加者。
「昔取った杵柄(きねづか)」の意味とは、「若い頃に餅つきなどで鍛えて身につけた技・腕前は、時がたってからも十分通用する」。デモ参加者の方は大学闘争や学生運動でならした元闘士たち、「杵柄の使い方」が体に染みこんでいますが、警官の方はこれから技術を覚えるつもり、なのでしょうか。