10月1日の暴力団排除条例の施行を見据えて、警察当局はテレビ局にも自浄を求めている。この9月1日、警視庁は民放連に対し、「暴排条例に沿った対応を取るように」と通告した。すでに民放連から各社に指導がされているが、当局は直接、徹底を図るべく動いていた。民放キー局幹部が明かす。
「9月中旬から警視庁の暴力団対策を担う組織犯罪対策3課の課長と、暴排条例を監督する排除係の係長、管理官の計3名が各テレビ局に直接足を運んでいる。そこで局側にタレントやプロダクションと文書による契約を結ぶように迫った」
「これまで事務所やタレントとの出演契約は口頭での申し合わせだけで、契約書をあまり作らないのが業界の慣習」(キー局社員)だったが、当局はテレビ局と芸能プロと暴力団の「馴れ合い関係」を問題視したようだ。
今後、タレントとテレビ局が締結する新たな契約書には、「暴力団と交際のあるプロダクション、タレントは出演させない」「暴力団との交際が発覚した場合は契約を解除する」といった文言が盛り込まれるとみられる。目的は暴力団に流れるカネを監視し、当局が睨むブラックなプロダクションや芸能人とテレビ局の関係を断つことにある。
さらには、これまでどんぶり勘定で怪しい“コーディネーター”などに支払われていたカネも、今後は説明がつかなくなるから払いにくくなる。ヤクザにも弱いが、当局にはもっと頭の上がらないテレビ局は、今までは「馴れ合い関係」を続けてきた芸能人たちを、一斉に“トカゲの尻尾切り”し始めた。
「すでに制作会議などでタレントの人選に細心の注意を払うよう伝達し、暴力団と関係があるとされる芸能人を局として把握するためにリストアップ作業に着手した」(別の民放キー局幹部)
警察の圧力にビビリあがり、「ブラック芸能人リスト」の作成が始まったのだ。年末までにリストアップを終える予定で、各局は連絡を取り合い、情報を共有しながらリストを作成しているという。理由は、テレビ局らしい談合体質と「横並び意識」にある。
「あるキー局1社だけがA事務所のタレントをブラックと判断すると、他の局にタレントを持っていかれたり、なぜ判定したのかと根拠が問われたりするだろう。だから、全局が一斉にその事務所やタレントを排除する方向にする」(前同)
これから放送局間で会合を持ち、最終的には警察当局とも摺り合わせをしながら、「リスト作成」を進めていく手筈という。つまるところ、リストに載った“お仲間”の情報は随時、警察に密告されるということだ。
※週刊ポスト2011年10月7日号