シネコンに押されて、東京都内でミニシアターの閉館ラッシュが続く中、本の街・神保町にシニアを中心にファンを増やす名画座がある。出版社・小学館が「神保町を元気にしたい」との思いを込めて、2007年にオープンした神保町シアターだ。
その神保町シアタービル2階に入る『神保町花月』も、神保町を活気づけている。実は大正11年に開場し、戦災で閉じた『神田花月』を蘇らせた小屋だ。若者もシニアも笑いを求めて集まる。
劇場では芝居、トーク、スケッチコメディなど、毎日2~4回公演が行なわれている。出演者はこれからが楽しみな若手芸人が中心で、そのため観客も10代、20代と若い。
しかし7月より始まった「神保町よしもと花形寄席」は、落語の昼公演とあってシニアで賑わっていた。『時そば』の原話とされる上方の『時うどん』など演目はいずれも短く、落語初心者でも楽しめるものばかり。最後の大喜利は客も巻き込み、和やかな雰囲気の中、拍手喝采で幕を閉じる。シニア入場料は1000円。江戸とは一味違う上方落語に、気軽に触れられるいい場所だ。
テレビではヘタレ芸人の顔を持つ山崎邦正(43)だが、高座では月亭方正。
「不惑を前にこのままではアカンと悩んでいたら、東野幸治さんが落語を勧めてくれて。やりたいと思ったらすぐにやるのが僕。月亭八方師匠の下に稽古に通い、高座名をいただいたのが3年前です。桂枝雀師匠や立川志の輔師匠のDVDを観まくりましたよ。
テレビは団体芸で僕に求められているのは子供役、でも落語は一人だから父親。だからかなー、落語だとスラスラ喋れるんですよ」と山崎。
高座で頭を上げたとたん舞台がパッと華やいだのに「おっ」と思い、古典『猫の茶碗』が始まると3年弱とは思えぬ上手さに驚いた。「一生の仕事にしたい」というだけあり正調、いい意味で裏切られた。
※週刊ポスト2011年10月7日号