東日本大震災による生産ストップから立ち直り、販売店への新車供給が急回復して活気を取り戻してきた自動車業界。ハイブリッドカーを凌ぐ低燃費を実現する“第3のエコカー”で“ガソリン車の逆襲”が始まった……。
記者発表の約1か月前から告知CMを展開し、「第3のエコカーブーム到来か?」と話題のダイハツ『ミラ イース』が、9月20日、発表となった。新燃費測定方法・JC08モード(※1)でガソリン1リットル当たり30km走行という低燃費と、80万円を切る低価格が売りだ。
「時代の流れやライフスタイルの変化に対応した『ミラ イース』は、若い女性や主婦、リタイア後の夫婦、地方ではセカンドカーとして、幅広い層がターゲットです。発売後1年間は月1万台、その後は月7000台を販売目標としています」(ダイハツ工業 技術本部 エグゼクティブチーフエンジニア 上田亨氏)
第3のエコカーとしては、先行するマツダ『デミオ13-スカイアクティブ』も販売好調だ。
「月間販売台数6000台を目標としていた新型『デミオ』は、6月9日の予約受注開始から、発売1か月後の7月末までに1万3500台を販売。うち7割が低燃費を実現するスカイアクティブテクノロジー搭載車でした」(マツダ 国内広報部 塩崎さと子氏)
8月度の新車販売ランキング上位がトヨタのプリウスと軽、小型車で占められていることでもわかるように、いま国内の自動車販売のキーワードは“エコ”と“コンパクト”。第3のエコカー陣営はいずれも攻めの姿勢だ。
モータージャーナリストの松下宏氏はいう。
「日本のエコカー開発は、EVやHVのように電気の力を借りて燃費を良くする手法が注目されてきた。対して、ガソリンの素の力で燃費を良くするというのが“第3のエコカー”。私は“ガソリン車の逆襲”と、位置づけています」
「ドイツ車などは、排気量の小さいガソリン直噴エンジンと、スポーツカーなどに搭載して燃焼効率を上げる過給器・ターボチャージャーを組み合わせ、高出力と低燃費を実現する“ダウンサイジング”のエコカーが主流。一方、日本の“第3のエコカー”は、非常に日本的な緻密で細やかな技術開発や改良の積み重ねで、低燃費と低価格を実現。実質燃費の良いことも特徴です」(松下氏)
「ミラ イースは従来車(※2)と比較して、エンジン改良で+14.2%、CVT(無段階変速)車で世界初の“停車前アイドリングストップ”で+10%、シェルボディの骨格合理化など大人1人分・約60kgの軽量化で+5.1%など、ダイハツの持つ技術を結集して低燃費を達成しました。
中でも、停車前アイドリングストップは、速度0からではなく7kmから止まることで、その間のガソリンを節約。信号の多い日本の市街地では使用頻度も高く、低燃費に貢献します」(前出・上田氏)
エコカーは今後、電気の力を借りたHV、プラグインHV、EV、最終的に燃料電池車、水素自動車へと進んでいくといわれている。しかし、水素自動車の普及には50年以上かかるとも。
価格やインフラの面でも課題が多い。「『e:S(イース)』のeにはエコロジーとエコノミー2つの意味があります。第3のエコカーは、誰でも買える“みんなのエコカー”。特に軽自動車である『ミライース』は、燃費がHV並みでありながら、価格はその半額、保険やガソリン代、諸々の維持費などもお得です」(同前)
エアコンや冷蔵庫のように、買い替えで気軽に省エネ生活を実現できる第3のエコカーの登場。気になるのは新車購入や買い換えのタイミングだ。
「今後、新モデルのエコカーは続々と登場予定で、生産が滞っていた分、各社ともに販売に力を入れていく傾向。豊富になった選択肢の中から、焦らず購入を決めてください。ただ増税によってエコカー減税が来年4月までという予想もあるので、人気車種は納車から逆算して購入を。いずれにせよ、この半年くらいが買いのチャンスです」(前出・松下氏)
【※1】国土交通省が定める自動車の燃料消費を測定する方法は、2011年4月より、従来の「10・15モード」から「JC08モード」へ移行。JC08モードは実際の走行パターンに近い方法での測定となっており、一般的に10・15モードより10%ほど数値が厳しくなったといわれている。
【※2】ミラ2WD/CVT (アイドリングストップ機能なし)
※週刊ポスト2011年10月7日号