文筆家で女性用アダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表の北原みのり氏が「女の本音」について、読者に語りかけます。3回目は「30代女性と40代女性のそれぞれの性」について。(聞き手=神田憲行)
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——北原さんが経営する女性用アダルトグッズショップ「ラブヒーズクラブ」は、オープンしてから14年目なんですが、その間に女性の性意識でなにがいちばん大きく変わりました?
北原:コアユーザー層ですね。あたしが26歳でオープンしたときはやっぱり同じくらいの年代の女性がユーザーとして多くて、そのあと20代後半から30代半ばまでの恋も仕事もセックスも楽しもう! という女性が多かったのですが、ここ最近は40代の女性がコアユーザーになりました。
たぶん40代でどこまで自分がセックスを楽しめるのかわからないから、不安になるんでしょうね。結婚している40代の女性でも私に「ここは男性は紹介してくれないんですか」と聞いてくる人がいますから。「うちはグッズショップなので、ナマモノ取り扱ってないんですよ〜」とお断りするんですが(笑)。
いまいちばん楽しい盛りのはずの30代前半の女性が真剣な顔して余裕がないんですよね。
——売れ筋商品も違いますか?
北原 五、六年前には30代の半ばの女性に膣トレばっかり売れるようになって、有り難いですけれど、複雑な気持ちにもなりました。だってそれって相手を喜ばせるためのものだから、自分の楽しみじゃないわけですよ。相手を喜ばしたりとか、虜にしたいとかそういうことのために買っている。
恋愛とかを必死に頑張っちゃって、いい男を捕まえてもっと巧くこの社会を生き抜いてやるっといって膣トレとかするんですよ。凄く可哀想。もっと楽しめばいいのに。
バブル世代の女達は「仕事も恋愛もセックスも楽しむわ」だったんですけれど、30代の女性は自分たちはもっと賢く生きてやるという感じですよね。
勝間和代さんは私よりひとつ年上なんですが、とても同世代とは思えない。自由な感じがしなくて、抑圧的な頑張る感じ。同世代の女性よりはさっき言った30代半ばくらいの必死になって膣トレする子たちに受ける。だから私はそういう子たちを「カツマン」と呼んでいるんですけれど(笑)。セックスを真面目に頑張るんです。楽しもうよと思うんですけれど、自分の欲望を平気で置いていける感じ。40代の方が、自分の欲望に忠実ですね。
——30代よりも、40代がセックスにアクティブと。
北原:あたし20代のときは30代になったらこの仕事やめるんだろうなあと思っていたら、性って自分の年代にあった問題がどんどん出てくるし、女であることが全然過去にならないんですね。
韓流とかいくと家ではきっと「オカアチャン」と呼ばれているような女性が凄くカワイイ服を着て香水をふりまいて来るんです。それでアイドルにキャーキャー騒いでいるのは端から見ると「気持ち悪い」かもしれないけれど、でもそんなの関係なくて、その女性の中には香水を付けているときにすごく自分が輝いていると思うんです。
そういう気持ちを絶対に貶めちゃったらいけないと思う。女の人の性欲とか笑う社会は自分も生きづらくなる。それをちゃんと肯定できる仕事をしたいなと思っているんです。
【北原みのり氏プロフィール】1970年生まれ。女性のためのアダルトグッズショップ「ラブピースクラブ」代表のほか、文筆活動も行う。最新刊に「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版刊)。