9月20日、東京ドームで行なわれた巨人対ヤクルトの試合。始球式に現われたのは、制服姿の樋口建史警視総監だった。10月1日から施行される東京都暴力団排除条例のPRのため、マスコットキャラクターの「ピーポくん」らと登場、「暴力団 みんなで追放 明るい東京」と書かれた横断幕を掲げてグラウンド内をパレードした。
警視庁の暴力団追放のポスターにも巨人の沢村拓一とヤクルトの由規が起用されるなど、プロ野球界は暴排条例のPRに一役買っているが、実は警察が暴排条例を世間に広く認知させるために、いま狙っているのは芸能人、そしてプロ野球選手なのだという。東京より一足早く4月から暴排条例を施行している、大阪府警関係者が明かす。
「島田紳助の件で改めてわかったのは、暴排条例のPRには、有名人と暴力団の交際が明るみに出ることが、一番効果的だということ。芸能界だけじゃなく、球界についても情報を集めている。現役、OBを含め球界には暴力団関係者とクラブで派手に飲んでるという情報もあがってきている」
なかでも警察が注視しているのが、大物の元プロ野球選手Aだという。Aは現役時代にも、暴力団組員との黒い交際が報じられたことがある。そのAが、昨年11月、大阪・ミナミの高級クラブで、ある“事件”を起こしていた。目撃者が語る。
「Aは学生時代のチームメートと同窓会を開き、2次会でそのクラブに来ていたようだ。Aはその場にいなかった同級生を名指しにし、“お前はアイツ派だからな”“昔からアイツの周りでへいこらしていたな”などと悪口をいいだした。
見かねた同級生が“もういい加減にしたら”と諭すと、Aは“なんだ、やんのか!”といきりたった。さらに同級生に掴みかかろうとするAを周囲が止めると、“お前ら、俺のケツ持ちが誰か知ってるのか”と凄んだんです」
このときAが名前を出したのは、他ならぬ弘道会の名前だったという。巨漢のAに凄まれ、しかも誰しも知る暴力団組織の名前を出して脅されたチームメートは震え上がったという――。本誌が警察関係者を取材したところ、Aの暴力団との交遊は警察も把握していた。
「Aは、女性問題のトラブルで暴力団にからまれたことがあり、その際に別の暴力団の実力者の力を頼って解決してもらったようだ。それを端緒に、現在に至るまで暴力団との関係を深めていると我々は見ている」
その他、Aと暴力団との交際は細部に至るまで一覧となって警察に保管されているらしいことがわかった。それだけではない。Aを知る人物が明かす。
「最近、Aが変わった形のペンダントをしていたんですが、“これは○○のものなんだ”と関東のある暴力団の名を自慢していました」
なにかにつけ引退後の面倒を見てきたタニマチ的存在の会社社長B氏はそれを伝え聞いて激怒、「こんな時期に何を考えてるんだ」と絶縁を申し渡したという話もある。それ以外にも銀座では、東京に本拠を置く暴力団組員らと仲良く酒を飲む姿も目撃されている。
Aは周囲に「俺は特定の組織とは付き合わないから大丈夫だ」と嘯いているというが、Aと暴力団との交際は、幅広く、かつ浅からぬものがあるようだ。
※週刊ポスト2011年10月7日号