部下にイライラ、妻にイライラ、我慢できずぶちまけて、職場も家庭もギスギス。自分の激情をコントロールできずに失敗するビジネスマンは多い。そんな現代社会を上手に生き抜く「アンガーマネジメント」という考え方が注目を集めている。怒りをコントロールすることで、職場でも家庭でも威厳ある立場を保つことができる。
アンガーマネジメントは、「自分自身を変える意志」さえあれば、誰でも習得できる。
『「怒り」のマネジメント術』(朝日新書)の著者で、社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事の安藤俊介氏によれば、アンガーマネジメントのテクニックで最初に覚えるべきは、とっさの怒りを鎮めて冷静さを取り戻す即効性のある技だという。代表的なものをいくつか紹介しよう。
最初に挙げるのは、「怒りを0~10段階にレベル分けする方法」である。怒りの感情が生まれたときに「この怒りはどの程度か」を自分で判定するのだ。
たとえば、「少しイラッとしたからレベル2だな」とか、「手が震え出すほど爆発寸前だからレベル9だ!」とか、怒りを感じるたびに心の中で数値化する。怒りの感情から意識を遠ざけ、自分を俯瞰して見ることで冷静さを取り戻すわけだ。このレベル分けを続けると、「この間はレベル7だったが、いまの怒りは5なので、十分堪えられるな」と判断できるようにもなる。
心の中で「魔法の言葉」を唱える、という方法もある。公共の場で非常にマナーの悪い人間を見かけ、頭に血が上ったようなときに有効な技で、「犬のうんこ、踏んじまえ」とか「モテないだろうな、こいつ」とか、心の中で他愛ない毒を吐いてみる。または、「明日になったら忘れている」「怒ったら必ず後悔する」といった、心を落ち着かせる言葉を見つけ出し、その都度唱えるのもいい。
次は「カウントバック」と呼ばれる方法。「100から3ずつ引き算していく」、つまり100、97、94、91……と数えていくことで、手間のかかる計算をしている間に意識が怒りの感情から離れるという仕組みである。2秒間のディレイ(遅延時間)をつくると衝動的な怒りは収まるといわれている。
得意先との打ち合わせで、延々と無理な要求を突きつけてくるのを聞きながらイライラしてきたようなときは、「携帯の傷を数える」という方法もある。これも原理は同じだ。心が沈静化したら打ち合わせに気持ちを戻せばいい。
「お札をイメージする」という方法は、実際に米国のプロスポーツ選手が受けるセミナーで奨励されている。怒りの感情が起きたら、札束を思い浮かべ、暴れたら飛んでいって失うと想像する。ビジネスマンの仕事の怒りも同じことなので、お札をイメージするのはいい方法かもしれない。
これらの方法は、一時的に怒りを鎮める「対症療法」だが、トラブルを回避するという点では非常に効果的である。
※週刊ポスト2011年10月7日号