日本周辺では韓国漁船による違法操業や密漁が公然とまかり通り、貴重な海の幸がどんどん奪われている。しかし日本側は対抗措置をとることはまずない。コラムニストの勝谷誠彦氏は「漁業資源を護ることを怠ると、次は領土を失う」と警告する。
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わが国固有の領土であるにもかかわらず、竹島は韓国人にとって愛国心を鼓舞する絶好の舞台となっている。島へのツアーが出発するのは鬱陵島(ウルルンド)だ。2005年5月、私はまだほとんど日本人が行っていなかった竹島ツアーに潜入するべく鬱陵島へ上陸した。
埠頭のまわりは掘っ建て小屋のような食堂だらけだった。水槽にはイカが泳いでいる。店の女主人が韓国人観光客に説明していた。「このイカは独島の近くでとれたものなんですよ」。観光客の顔がひときわ輝き得意気になる。
私にしてみれば盗品を目の前にしている気分だ。本来ならばそれらは鳥取や島根の漁師たちがとり、築地市場を経て日本中の人々が食べるはずのものだったのだから。
竹島に向かう船に乗りこむ。日本語は禁句だ。日本人だとわかるとどういうリンチを受けるかわからないと注意されていた。船は島を一周して戻ってくる。ちょうど船尾が竹島に向くように操船され、韓国人たちは国旗と竹島が重なるアングルで喜々として記念写真を撮るのである。
視野の端にそれが入って嫌な気分になりながら私はしきりに竹島に向けてシャッターを切った。稜線に銃座があり国境警備隊員が横に立っている。レンズを下ろしていくとファインダーに白い船が入った。倍率をあげる。集魚灯が見える。イカ釣り漁船だ。
今は昼間なので操業していない。夜になるとここで日本国のものであるイカを盗むのだろう。本来ならばわが国の巡視船がやってきて警告し、それでも立ち去らなければ拿捕すべきなのである。しかし韓国漁船は背後の機銃に護られて、悠々と夜の漁を待っている。
これが領土を実効支配されているという惨めな現状なのだ。そして、そこで奪われているのは目の前の島だけではなく、海面の下にある豊かな漁業資源でもあるのだ。まさにそのことを実感した瞬間であった。
鬱陵島に戻って「独島博物館」に寄った。ある財閥が作ったこれはウソとペテンで塗り固めた展示をしている。その庭にこんな石碑があって私は頭が痛くなった。『対馬島本是我国之地』。対馬はもとよりこれわが国の地、と読みくだすのだろう。竹島は当然オノレのもの。対馬もまたオノレのものなのだそうだ。
※SAPIO2011年10月5日号